良寛に愛された貞心尼とは? わかりやすく解説

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良寛に愛された貞心尼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 05:42 UTC 版)

貞心尼」の記事における「良寛に愛された貞心尼」の解説

相馬御風は、次のように述べている。 古来男女の間に唱和された歌で広く世に知られているものは、無論少なくない。しかし、今日までに私自ら読んだものでは、万葉集中の少数を除く外は、その表現切実味を以って胸をうつような作には、あまり多く接することが出来なかった。ところが、十数年前はじめて良寛和尚の歌を読み、その中に彼と彼の最愛弟子貞心尼との間に唱和され五十余首のあったのに接して、私はかくも淳真な、かくも切実な、かくも無礙な、かくも温かな、そしてかくも清らかな男女間の愛の表現あり得るものかと驚嘆措く能はなかったのであるそもそも此の良寛貞心唱和の歌は、良寛没後貞心尼苦心蒐集した良寛歌集蓮の露」の終わり添えてあるものであってこれほど数多く男女唱和の歌が一まとめにしてあるという点でも、古来あまり多くその類を見ないところであろう。それには尼貞心が僧良寛初め相識ってから、最後に良寛死によって永遠の別れ告げたまでの間に、両者の間に詠みかわされた歌の大部分しるされている。そしてその歌集序文終わり貞心尼自ら「こは師のおほんかたみと傍におき朝夕にとり見つつ、こしかたしのぶよすがにもとてなむ。」と云っているように、もともとそれは彼女みずからの追憶の料としてしるし集めたものであった。そこに此のに対して一段ゆかしさ私達覚えさせるものがある。 — 相馬御風 、「良寛愛された尼貞心」『貞心千代蓮月』1930, p. 3 何という純真な愛の表現であろう。「いざさらばわれはかへらむ……」の如き、「歌やよまむ手毬やつかむ………」の如き或いは梓弓春になりなば……」の如き、さては「いついつ待ちにし人は………」の如き、よむ度毎私達はその情緒みづみづしさと、温かさと、清さとに感動させられずにはいられぬのである而もそれが七十歳老僧と、三十歳美しい尼との間にとりかわされた愛の表現であることを思う時、私達はそこになみなみならぬ清い愛の世界の展開を想わずいられぬのである嘗て私は此の二人の関係について書いた折にも云ったように、この七十歳の老法師三十越えたばかりの此の尼僧との関係は、一面に於ては正に仏門に於ける師弟の交りであつた。又同時にそれは歌の道芸術世界、美の天地に於ける師弟でもあり、又道づれでもあった。而も現身人間としての両者の関係は、或時は親子のそれであり、或時は兄妹のそれであり、或時は最も親しき心友のそれであり、更に或時は最も清い意味での恋人のそれでさえもあったろう。清くして温く人間的にして而も煩悩執着なく、霊的にして而も血の通った美しく尊くいみじき愛ーまったく私はいつも此の良寛貞心との交りをおもう毎に、何ともいえない心のうるおひに充たされるのである齋藤茂吉氏も嘗てその著「短歌私鈔」の中で此二人の交りについてこんなことを云っていた。「良寛貞心との因縁極めて自然である。この事を思う毎に予はいい気持になる。良寛貞心会ってますます優秀なる歌を作った。その歌は寒く乾き切ったものでなく、恋人対するような温い血の流れているものである人間は生の身であるから、いくら天然愛したとて、天然遠慮なく人間迫って来る。そこにいて心細くないなどというのは虚である。良寛老境達してから淨い女の貞心から看護受けた本当の意味看護である。良寛にとっては、こよなき Gerokomik の一つであったろう。世に尊き因縁である。」 この齋藤氏見方には、私達真に同意することが出来る。いかにもそれは世にも稀な尊い因縁であったのである良寛和尚美し生涯考える上に、私はどうしても此の最晩年に於ける和尚貞心尼との交りをおろそかにすることは出来ない同時に良寛和尚の生活に対すると同じく貞心尼その人の生活に対してやみがたい興味をおぼえるのである。 — 相馬御風 、「良寛愛された尼貞心」『貞心千代蓮月』1930, p. 1618

※この「良寛に愛された貞心尼」の解説は、「貞心尼」の解説の一部です。
「良寛に愛された貞心尼」を含む「貞心尼」の記事については、「貞心尼」の概要を参照ください。

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