自然人を著作者とする映画の著作物の保護期間
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「著作権の保護期間」の記事における「自然人を著作者とする映画の著作物の保護期間」の解説
「モダン・タイムス」事件 2006年7月、チャーリー・チャップリンの映画の著作権を管理するリヒテンシュタインの法人が、『モダン・タイムス』(1936年製作)など複数タイトルのチャップリン映画の格安DVDを販売する東京の2社に対し、格安DVDの販売差止めと約9400万円の損害賠償を求めて、東京地方裁判所に提訴した。 原告の主張によれば、被告2社は『モダン・タイムス』など原告が著作権を保持管理する9作品について、原告の許諾を得ずに格安DVDを販売したことにより、原告の著作権を侵害したとする。 原告は、著作権存続の法的根拠について、旧著作権法(明治32年法律第39号。新著作権法(昭和45年法律第48号)の施行により、昭和46年1月1日廃止。)22条ノ3、3条1項、52条1項、および新著作権法の昭和45年附則7条により、著作権保護期間は著作者の死後38年であることなどを挙げる。すなわち、原告の主張によれば、9作品のうち7作品はチャップリン個人の作品であるため、チャップリンが死亡した1977年から著作権保護期間が起算され、それから38年経過後の2015年まで著作権が保護されることになる。 なお、文化庁は『平成18年度著作権テキスト』の中で、著作権が保護される「映画の著作物」(独創性のあるもの)として、「昭和11年(1936年)から昭和27年(1952年)までに公表された実名の著作物のうち、昭和40年(1965年)に著作者が生存していたもの」を挙げ、原告の主張に沿う見解を示している。 2007年8月29日、東京地裁は原告側の主張を全面的に認め『モダン・タイムス』など7タイトルは旧法の規定に伴いチャップリンの個人著作物と認められ、著作権保護期間は経過措置により2015年まで有効であると判断。さらに『殺人狂時代』(1947年製作)及び『ライムライト』(1952年製作)については2003年改正法の附則第2条(旧法と現行法のどちらかで保護期間が異なる場合は、より長い方を適用する)に基づき、公表後70年が適用されると判断。『殺人狂時代』は2017年、『ライムライト』は2022年まで保護期間が存続するとし、被告側に対し9タイトルの販売禁止と在庫の全量及びDVD製作に使用したマスターの廃棄・約1053万円の損害賠償を命じた。発売業者は知財高裁に控訴したが、2008年2月28日に控訴棄却の判決を下した。 さらに、発売業者は最高裁に上告したが、2009年10月8日、最高裁は上告を棄却し、1、2審判決が確定した。この上告審判決において最高裁は、旧著作権法における映画の著作者を「映画の創作に全体的に寄与した者」と規定し、9タイトルの著作者をチャップリン個人と認定した。その上で、「著作者が実名で表示された場合には、たとえ団体名義の著作物の表示があっても、著作者の死亡時から著作権保護期間が起算される」との初判断を示した。
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