自動車のマニュアルトランスミッション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 06:24 UTC 版)
「副軸」の記事における「自動車のマニュアルトランスミッション」の解説
後輪駆動車の一般的なマニュアルトランスミッションでは、ドライブシャフト(入力)はドリブンシャフト(出力)と同軸に並んでいるが、常に接続されているわけではない。ドライブシャフト上の減速ギアが副軸を駆動する。自動車のトランスミッションでは「カウンターシャフト」という用語も用いられる。副軸上のいくつかの歯車は、一度に一つずつドリブンシャフトに接続することができる。これらの歯車のそれぞれを順番に選択すると、変速機のさまざまな変速比を得ることができる。これらの全てのギア比は全て減速ギアであり、エンジンのクランクシャフトの回転数は、後車軸のファイナルドライブへの入力回転数よりも高くなっている。 初期の変速機は摺動歯車を用いて駆動の接続および切断を行なっていた。これは操作が難しく、歯車の作動面にも傷がつきやすかった。初期の改善点としては、歯車を都度噛み合わせる代わりに、それとは別のドッグクラッチを使用して、歯車自体を常時噛合い(コンスタントメッシュ)とすることだった。その後の、そしてより段階的な開発によってシンクロメッシュが導入された。これはポジティブドッグクラッチに加えた、全金属製の摩擦クラッチであり、ドッグクラッチが接続される前に歯車を徐々に接続して速度を一致させるものである。 変速機のトップギアはこれらの歯車を使わず、別のドッグクラッチを用いてドリブンシャフトを直接ドライブシャフトに結合することによって実現される。これによって「直接駆動」のトップギアが得られ、巡航色度での効率と静粛性の両方にメリットがある。典型的な変速機ではそれぞれの歯車で2%の損失があったため、2組の歯車を介した中間速では損失が4%となるが、直接駆動のトップギアでは0%に近づいている。トップギアは歯車を介してトルクを伝達しないため、静粛性でも優れている。 理論的にはオーバードライブ(オーバートップ)ギアを用意することも可能であるが、これは他のギアとはことなり減速ではなく増速ギアを用意する必要がある。この場合、直接駆動のギアは高速側から2番目か3番目のギアとなる。この配置は初期の自動車でも採用されてはいたが、当時は珍しいものだった。後輪駆動車にオーバードライブが装備されている場合、ほとんどの場合は変速機の出力軸に別のオーバードライブよう変速機を追加することで実現される。 変速機のレイアウトの都合で、副軸は通常は他の軸の下にある変速機のケーシングの下側に取り付けられている。変速レバーはケーシングの上部から入るため、ドッグクラッチの摺動部分は副軸ではなくドリブンシャフトに取り付けられることが多い。副軸の歯車群は多くの場合、一般的には固定された鋼製の軸上に軸受で保持されて回転する鋳鉄製の単純な一体部品である。軸受はリン青銅のブッシュによる平軸受か、高負荷の場合はニードルローラーベアリングが使用されることもある。 6速以上の変速比を提供する場合、副軸には3つ以上の歯車群が必要となる。変速機を細長くせずにコンパクトに保つために、これらの変速機では副軸を2本使用する場合がある。これには副軸ごとに追加のドリブンギアが必要となるが、それ以外の機構は単副軸のものに類似している。複数の副軸の使用はマルチクラッチ変速機へと発展し、一部のバスで使用されている。各変速比ごとに個別の副軸があり、ドッグクラッチではなく個々の平板クラッチないし油圧クラッチを使用してギアを選択する。 産業用車両がウィンチや油圧ポンプを駆動するためなどにパワーテイクオフが必要な場合、ドライブトレインですでに使用されているメインシャフトよりもアクセスしやすいことから、副軸の一端から駆動されることが多い。
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