美容面・精神面と治療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 18:31 UTC 版)
日本においては、第2次世界大戦終結頃までは、日本人の形質として歯槽側面角が小さい事による出っ歯の発現頻度が大きく、出っ歯が普通に見られたため、特に問題視や矯正される風潮はなかった。日本人の国民性として歯並びに無関心であったことも影響していると考えられる。アメリカでは、出っ歯が対象ではないにしても矯正歯科が20世紀初頭には行なわれていたのに対し、日本では第2次世界大戦後になってからの事であった。西洋人はキスなど口による愛情表現が多いが、日本人にはそうした習慣がないので、その影響も考えられる。戦後の日本人には歯槽側面角の増大が目立ち始め、全体として出っ歯の個体は減少し、それに伴い目立つようになり、またアメリカ文化の強い影響下に入った結果、白人の引き締まった口元が美的優位となったため、それらに伴う美的見地から恥ずべき特性とみなされ、歯列矯正が行なわれるようになった。それでも日本では、歯科医学において歯列の歪みである不正咬合の一つとされて治療(歯列矯正など)の対象とはなるものの、口蓋裂を伴うような重篤な場合を除いて疾患とは判断されず、国民健康保険は適用されない。 容貌が重要視される俳優・女優等の中にも、歯列矯正を受けた人が少なくないらしいと、インターネット上のサイトやブログで取り沙汰されているが、日本人の歯並びに対する関心が時代と共に変化している事が示されている。 しかし単に美容面だけではない。日本人全体で出っ歯が改善されつつある中では、出っ歯の者は、特に年少者においては劣等感や自己嫌悪を持つ場合がある。前述のように病気や異常ではないので、日常生活に差し障りがなければ特に治療の必要はないが、精神的負担が強い場合は、それが原因で対人関係の構築に支障をきたしたり人格形成にも影響が考えられるので、歯列矯正等を受ける事が望まれる。 治療法(歯列矯正)は多種多様である。一般には、矯正用の器具を継続的に、又は一定時間装着して微弱な圧力を歯列にかけ続けて徐々に歯を移動させる方式がある。弱い圧力は歯を通じて歯槽骨に伝わり、圧力を受けた歯槽骨は徐々に吸収されて消滅、そこに歯が移動する。反対側では歯の占めていた部分が新しい骨の細胞で埋められ、結果として歯の位置が変わって矯正の効果が表われる(藤田恒太郎 『歯の話』 岩波新書 1965年)。骨細胞の増殖が盛んで骨にも柔軟性のある少年期に行なうのが適しているが、成人でも可能である。長期間を要するのが難であるが、自分自身の歯をそのまま維持できる点が優れている。 他に、歯根部を残して歯の上部を切除した後に差し歯を装着する方法、あるいはブリッジと呼ばれる、抜歯して新しい人工歯を入れる方法がある(両隣りの歯を支えにして固定するのでブリッジと言う)。短時間でできる利点がある半面、自分の生きた歯ではなく異物を接続する事になるので、強度や長期間の維持の面では劣る。
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