経営悪化とカラーの貸付金支払い訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 09:53 UTC 版)
「ガイナックス」の記事における「経営悪化とカラーの貸付金支払い訴訟」の解説
2011年1月、本社を小金井市梶野町から三鷹市下連雀の旧・春日電機株式会社本社ビルに移転し、同年2月には富士重工業(現・SUBARU)との共同アニメプロジェクトの「第1弾」をうたった『放課後のプレアデス』(ウェブアニメ版)を配信した。 しかし『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』以後ヒット作を得られなかったことから、経営は2012年ごろから悪化し、かねての申し合わせによるカラーへの庵野作品使用料の支払いも滞納するようになった。滞納分について社長の山賀と取締役の武田康廣は、カラー代表の庵野に対して分割で支払うことを申し入れ、庵野もこれを了解したが、支払いが済まないうちに武田は2014年、「会社が持たない」として庵野に対して資金の借り入れを申し込んだ。ガイナックスの経営状況に危機感を覚えた庵野は、『エヴァンゲリオン』の商品化窓口やロイヤリティー分配業務移譲のスケジュールを当初の申し合わせから1年前倒しにすることを条件に、カラーから1億円を貸し付けた。 この時庵野は、カラーの主要スタッフとかかわりの大きい『トップをねらえ!』『トップをねらえ2!』『フリクリ』3作品の原作権の買い取りも山賀らに申し出て、いったんまとまりかけたものの、2015年5月には取引銀行の介入で大幅な人員整理が行われるとともに、『フリクリ』がプロダクションI.Gに売却されるなど、庵野が買い取りを提案していた3作品を含む多くの作品の権利が2014年から2015年にかけて他社に売却されたことがまもなく判明した。作品の権利や資料の散逸を懸念した庵野は、さらなる支払いの猶予や経営支援も視野に入れ、ガイナックスに経営状況の説明と返済計画の提示を何度か求めたが、ガイナックスは「経営状況に問題はなく、予定通りに返済する」としか回答しなかった。 このためカラーは2016年8月1日、資料散逸防止の観点からガイナックスに対する債権仮差し押さえを申し立て、8月26日に執行された。しかしその後もガイナックス側から返済計画の提示はなかったため、カラーは同年9月9日、貸付金1億円の支払いを求める貸金返還請求訴訟を東京地方裁判所立川支部に提訴した。 これに対しガイナックスは同年9月、制作部門のスタッフを全員解雇するとともに、取締役に前年就任した浅尾芳宣が代表を務める「福島ガイナックス」が都内に急きょ開設した「ガイナックススタジオ」(福島ガイナックス東京スタジオ、現・スタジオガイナ)に強制移籍。さらに同年10月には本社を三鷹市下連雀から武蔵野市御殿山のマンションの一室に移転した上で、訴訟について裁判で争う姿勢を示したため、同年12月に対立が表面化し、全国の注目を集める結果となった。 訴訟は翌2017年6月、カラーの訴え通り1億円を支払うよう命じる判決が下り、ガイナックスが控訴しなかったため確定した。このとき、ガイナックスの年商は2016年7月期で約2億4000万円と5年前(2011年7月期)の10分の1に激減しており、この裁判の提訴時点で約1億円の債務超過状態にあることも明らかになった。さらに裁判を通じ、福島ガイナックスに対し、制作関係他社やスタッフに無断でガイナックスが保有する過去作品の重要資料が大量売却されていたことが判明。カラーはこれらを福島ガイナックスから買い戻し、関係各社の了承を得た上で特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構の管理下に置いた。
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