精神療法の基本的前提
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:07 UTC 版)
「解離性同一性障害」の記事における「精神療法の基本的前提」の解説
柴山雅俊は「解離に対する精神療法の基本的前提」として以下の10項目を挙げている。 安全な環境と安心感の獲得 有害となる刺激を取り除く 人格の統合や心的外傷への直面化にはあまりこだわらない 幻想の肥大化と没入傾向の指摘 支持的に接し、生活一般について具体的に助言する 言語化困難な状態であることを考慮し、隠れた攻撃性や葛藤についてふれる 病気と治療について解りやすく明確に説明する 自己評価の低下を防ぎ、つねに回復の希望がもてるように支える 破壊的行動や自傷行為などについては行動制限を設け、人格の発達を促す 家族、友人(恋人)、学校精神保健担当者との連携をはかる なおここでは柴山雅俊のものを紹介したが、アメリカの治療者でもニュアンスは共通する。もちろん昔日本にも紹介されたアメリカのものとは違う部分もある。例えば1986年時点のブラウン (Braun,B.G.) の治療の12段階には「治療契約をする」という項目が含まれていた。契約といっても世間一般でいう契約書ではなく「私は、いつ何時でも、偶然か故意かを問わず、自分自身をも外部の誰をも傷つけたり殺したりしません」というような治療者と患者の約束事であり、治療的意味合いが強い。柴山の10項目の9番目にある「破壊的行動や自傷行為などについては行動制限を設け」がそれに近い意味合いである。 またマッピングと言って、患者に内部の交代人格の存在とか相互の関係を図に書かせることも、少なくとも1990年代中半まではスタンダードな手法であった。ロス (Ross,C.A.) も1989年当時はマッピングを重視していたが、1997年には「私は敢えてそれをするよりは、各交代人格が自然に出現してくるに任せるようにしている」と述べている。パトナムの1997年の『解離』でも、目次はおろか索引からすら姿を消している。1997年は様々な点でDIDの環境や治療方針が大きく変わった年である。2020年現在でも使われることもあるが、アメリカでも日本でも必須とはされていない。 上記の10項目の3番目は2つの問題に分割される。「除反応かレジリエンス(自然治癒力)の強化か」「人格の統合がゴールか」という2点である。
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