第2作『たのしいムーミン一家〜ムーミンと魔法使いの帽子〜』の制作
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第1作の成功を受けて、グレーヴは2作目の実現に向けて行動を始めた。2作目ではグレーヴ自身が振付も担当することになった。そこで彼は「ムーミンをバレエ化したい」と最初の閃きを受けたときの構想の実現に動いた。 その契機となったのは、『ムーミン・バレエ』に興味を抱いた日本側とのやりとりであった。日本公演に向けて「ムーミンでバレエを作るのではなく、日本公演ではムーミンから新しいバレエが生まれる」というコンセプトで制作が進んだ。グレーヴは日本ではムーミンの物語が持つ「哲学的な部分」に惹かれる大人のファンが多いことに着目し、ドタバタコメディーなどではなく「感情的・感覚的」なものにしたいと考えた。言葉のないバレエという芸術表現において、「すべてを語るのは無理でも、トーベの精神や物語の雰囲気を伝えたい」という思いがグレーヴを動かしていた。 2作目の題材に選ばれたのは、『たのしいムーミン一家』(原題:Trollkarlens hatt、1948年)だった。音楽を担当したのは、トゥオマス・カンテリネンであった。カンテリネンは『モンゴル』(2007年)や『ザ・ヘラクレス』(2014年)など、映画音楽をメインとして活動する作曲家で、フィンランド国立バレエ団から委嘱を受けて『雪の女王』、『人魚姫』という2作のバレエ音楽を作曲した経験の持ち主であった。 グレーヴは1幕物バレエ作品(約50分)に仕上げるために、原作の印象的な部分を切り取ったり、登場人物を一部入れ替えたり省いたりしたものの、「寄せ集め」にならないように特に意を用いた。グレーヴにとって難題だったのは「どうやってムーミンを美しく踊らせるか」という点であった。着ぐるみで踊られるムーミンの体型は大きいため、柔らかな動きやピルエットで回ることなどは不可能であった。もう1つの問題は、着ぐるみに入ると視界と足の動きが制限され、しかも中は非常に暑いことだった。 グレーヴがダンサーたちに求めたのは、「どんな体でも水中で動いているようなエレガントさを保つ」という点であった。練習には時間がかかったものの、ダンサーたちの高い身体能力と舞踊技巧によって、着ぐるみのムーミンやスノークのおじょうさんなどの動きで優美さを表現することが可能になった。 バレエでは言葉の代わりに花々や雪の精、自然の猛威などが踊りで表現され、原作が繰り返して語る「自然の大きさ、自然へのまなざし」というテーマを別の手法で際立たせることに成功した。グレーヴは作品の振付において、クラシック・バレエの技巧も存分に活用した。作品のクライマックスにおける飛行おにと女性の姿に変じたルビーとのパ・ド・ドゥは、バレエの技法があってこその見せ場となった。初演でルビーを踊った松根花子は「最終的にはムーミンをはじめ、キャラクター要素の強い役柄がたくさん登場するので、ルビーという宝石の鋭さや輝きをイメージした指先のちょっとした動きを加える程度でピュアなクラシックのスタイルに落ち着いたんです」と「ダンス・マガジン」2017年7月号のインタビューで答えている。 バレエ団は2017年4月にフィンランド独立100周年祝賀イベントの一環として、初の日本公演を東京と大阪で行った。日本公演のために制作された『たのしいムーミン一家〜ムーミンと魔法使いの帽子〜』は4月22日にオーチャードホールで初演され、東京で6回、大阪で2回上演され、好評であった。なお、フィンランドでの初演は2018年1月の予定である。
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