第二次世界大戦後〜現代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 04:52 UTC 版)
艦固有の運動力(速力)・攻撃力・防御力よりも指揮・通信能力が最重要視されるようになった。というよりも、戦艦という艦種が消滅へと向かい、それぞれの艦に速度と防御力の差が無くなり、攻撃力についてはそれぞれの艦の任務に由来する時代となった。 アメリカ海軍では戦後は、デモイン級重巡洋艦が多くの艦隊の旗艦を務めた。個艦としての戦闘能力は旧態依然としていたが、指揮・通信能力を拡充するに十分な艦体規模と、他艦と同一行動を取れる速度性能を兼ねており、旗艦任務には最適の艦とされた。現代、第6艦隊・第7艦隊旗艦任務を務めているブルー・リッジ級揚陸指揮艦の艦種は「揚陸指揮艦」であり、指揮・通信能力や居住区は十分あるが戦闘能力はほとんど無い。 海上自衛隊の護衛艦「あきづき」は自衛艦隊旗艦になる際にMk.108対潜迫撃砲を撤去しているし、「たちかぜ」は護衛艦隊旗艦になる際に、わざわざ2番砲塔を撤去して司令部施設を設けている。 また、通信機能の発達により、第二次世界大戦中の連合艦隊が示した通り、艦隊に対する総指揮は後方の陸上基地によって執り行うことが可能となってきており、旗艦の任務は限定的、あるいは象徴的なものとなっている。 アメリカ海軍は本国から離れた艦隊は指揮能力の高い旗艦を配備しているが、第2・第3艦隊は陸上にあるアメリカ艦隊総軍が指揮を行っている。 海上自衛隊は、群司令が乗艦する旗艦を自衛艦隊や護衛艦隊に置くなど旗艦の任務を重要視していた時期もあった。しかし、1963年(昭和38年)3月に自衛艦隊司令部は陸上に移り自衛艦隊旗艦は廃止された。2010年6月に退役した護衛艦「さわかぜ」を最後に護衛艦隊でも旗艦運用は廃止され、その後、海上自衛隊護衛艦隊旗艦は存在しない。ほかに、旗艦と呼ばれる艦には第1・第2・第3・第4の各護衛隊群旗艦もあったが、2008年3月の護衛隊の改編に伴い群旗艦も廃止された。 旗艦を艦隊の指揮を執る実戦用の艦としてよりも、象徴的な存在として扱う例は多く、例えばイギリスにおいて1946年に竣工した戦艦「ヴァンガード」は1955年まで本国艦隊旗艦を勤めたものの、その任務は「王室専門ヨット」と言うべきものであった。アルゼンチン・ブラジル・チリの南米3国の海軍は、長らく保有する戦艦を旗艦として運用したが、それらが限界に達して退役した後は、アメリカからブルックリン級軽巡洋艦を購入して、海軍の象徴的存在として扱った。しかし実戦用の艦としては明らかに旧式化しており、フォークランド紛争においてアルゼンチン海軍の「ヘネラル・ベルグラノ」が、何ら実戦の役に立つ事なく撃沈される事態となった。
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