眼咽頭型筋ジストロフィー
まれな疾患で、中年以降に眼瞼下垂からはじまり、咽頭筋が侵される病気です。
a 病因、病態、病理
常染色体優性遺伝をとります。遺伝子座は第14染色体長腕(14q11.2-q13)にあります。責任遺伝子はポリ(A)結合蛋白(poly
(A) binding protein nuclear 1: PABPN1)で、患者さんではその遺伝子にGCGという繰り返し配列が8−13回に増加しています(正常では7回以下)。まだこの遺伝子の異常がなぜ、目や喉の筋を侵すかはよくわかっていません。
筋ジストロフィーの名前がついていますが、病理学的には筋ジストロフィーのような筋繊維の壊死・再生の所見はありません.
眼と咽頭だけでなく、手足の筋肉にも軽い症状(筋力低下)があるので、手足の筋生検をしても診断的な変化をとらえることができます。筋線維の大小不同があり、縁取り空胞(rimmed
vacuole)(縁取り空胞型遠位型ミオパチー:図37参照)がみられます。また電子顕微鏡で筋細胞の核を調べると核の中に細いフィラメント様な物質が束になって存在します(tubulofilamentous
inclusion)。このフィラメントの直径は8.5nmという細いものです。この核の中の封入体を確認することが診断的な根拠となっていましたが、今は遺伝子診断が可能です。非常にまれですが、常染色体劣性遺伝も報告されています。劣性遺伝では遺伝子の異常はまだ確認されていません。
b.臨床症状
比較的まれな病気です。カナダ在住のフランス人に多いといわれています。日本でも最近つぎつぎとみつかっています。
常染色体優性遺伝をとるので、家族の中に同じ症状を持つ方が多くおられます。この病気の特徴は眼瞼(まぶた)が下がることですので、ご家族の集合写真をみるとあちこちにまぶたが下がった人がみつかります。
ほとんどの方は50歳を過ぎてから、眼瞼下垂が始まります(50歳以下は10%)。最初は片方だけのこともありますが、早晩両方の目にきます。また目の症状から遅れることが多いのですが、のど(咽頭筋)が弱くなります。ですから物が飲み込みにくい、言葉がはっきりしない、などの症状が出てきます。
顔の筋肉、舌の萎縮も半数以上にみられます。手足の筋力低下もあり、それは主に躯幹に近い筋にみられます。きわめてまれに手足の端のほうが侵されることがあります(この場合は眼咽頭遠位型ミオパチー(15.(3)参照)との鑑別が必要となります。手足の筋肉の侵され方も軽く、また呼吸筋や心筋が侵されないので天寿を全うするといわれています。眼瞼下垂が強いとき、嚥下が困難なときは手術を行ってよい結果を得ています。
眼咽頭型筋ジストロフィー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/22 13:54 UTC 版)
「ポリ(A)結合タンパク質」の記事における「眼咽頭型筋ジストロフィー」の解説
眼咽頭型筋ジストロフィー(英語版)(OPMD)は、成人で多くの場合40歳以降に発症する遺伝子疾患である。多くの場合、この疾患では顔面の筋力の低下が引き起こされ、しばしば進行性の眼瞼下垂、嚥下障害、脚や臀部など四肢近位筋の筋力低下がみられる。この疾患は歩行するために杖や歩行器が必要となる程度まで進行することが多い。OPMDは約29か国で報告されており、患者の数は集団によって大きく異なる。常染色体優性または劣性の形質として遺伝する可能性がある。
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