生徒の知識
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 07:26 UTC 版)
右のグラフは、イギリスの初等教育課程(英語版)において小学一年生から六年生の生徒たちがゼロの偶奇性について信じていることの内容を示している。このデータは、イギリスの学童に関する2つの調査を実施したLen Frobisherによるものである。彼は、一桁の数についての偶奇性の知識が、どのようにして多数桁の数の偶奇性の知識に移行するか、ということに興味を持っていた。この結果においてゼロは際めて目立っていた。 およそ400人の7歳児を対象とした予備調査において、ゼロの偶奇性を尋ねたとき、45%が「奇数」よりも「偶数」を選んだ。詳細調査では、さらなる選択肢として「どちらでもない」「両方」「わからない」が加えられた。このとき、ゼロを偶数であると判定した同年輩の子供の数は32%に落ちている。小学三年生から六年生にかけて、ゼロが偶数であると正しく決められた生徒の割合は、最初は歳ごとに上昇するが、50%付近で横ばいになる。対照として、一桁の数の偶奇性を決定するというもっともやさしい課題に対しては、およそ85%の正答で横ばいになる。 インタビューによって、Frobisherは生徒たちの理由付けを聞き出した。ある五年生の生徒は、2の九九表に0を見付けたので0は偶数とした。ある四年生の二人の生徒は、ゼロが二分割できるということを理解していた。他の五年生の生徒は「1は奇数だから、1つ下がればそれは偶数だ」と理由付けた。このインタビューでは、不正解の背景にある誤った認識も解明された。ある二年生の生徒は、最初に数える数である、ということに基づき、ゼロは奇数だと「完全に確信していた」。ある四年生の生徒は、ゼロとは「何もない」ということであり偶数でも奇数でもない、なぜなら「ゼロは数ではないから」と考えた 。他の研究において、Annie Keithは、それぞれ偶奇の交替性、および、ゼロのものを等しく0の2つのグループに分けることの可能性を理由として、ゼロは偶数であると確信した、二年生の15クラスの生徒を観察した。 さらに深い研究が、Esther Levenson、Pessia Tsamir、Dina Tiroshの三者により実施された。彼らは、数学の授業で高度に優れている六年生の二人の生徒にインタビューした。一人の生徒は数学的な主張の演繹的説明を望んだがもう一人は実際的な説明を好んだ。二人共最初は、違う理由から、0は偶数でも奇数でもないと考えていた。(Levenson, Tsamir & Tirosh 2007)では、生徒たちの理由付けに、どのようにしてはこれらのゼロと割算の概念が反映したかを示している。 生徒たちによる主張ゼロは偶数または奇数ではない。 ゼロは偶数かもしれない。 ゼロは奇数じゃない。 ゼロは偶数でなければならない。 ゼロは偶数ではない。 ゼロは常に偶数であるべきだ。 ゼロは常に偶数であるべきということはない。 ゼロは偶数。 ゼロは特別。 Deborah Loewenberg Ballは、三年生のあるクラスの生徒たちの奇数と偶数とゼロについての考え方を解析した。彼らは、ちょうど四年生のグループと議論していた。生徒たちはゼロの偶奇性、偶数の規則、およびいかに数学がなされるかを議論していた。ゼロについての主張は、表に見るように多数の形式があった。 Ballと彼女の共著者は、このエピソードを、通常の演習における機械的解法での自律性の減少とは異なり、いかにして生徒たちが「学校で数学をする」ことができるかを示したものだ、と論じた。 この研究論文における主題の一つは、生徒たちの概念像と概念定義(英語版)の間の葛藤である。(Levenson, Tsamir & Tirosh 2007)の六年生は二人共、2の倍数として、あるいは2で割り切れる数として偶数の定義を与えられていた。しかし彼らは最初、この定義をゼロに応用できなかった。なぜなら彼らは0を2で割るまたは2を掛けることについていかにすべきか自信が持てなかったから。インタビュアーは最終的に彼らにゼロは偶数である、という結論に導かせた。生徒たちは、イメージ、定義、実際的な説明、および抽象的な説明の組合せを描くことで、この結論に違う方向で到達した。他の研究では. David Dickersonと Damien Pitmanは 5人の上級の学部教育数学専攻者による定義の使用を調査した。彼らは、学部生はゼロに対して偶数の定義を十分に応用できるものの、それは彼らの概念像と矛盾するため、彼らはまだこの理由によっても納得しなかったことを見出した。
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