狭義の理想気体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 06:14 UTC 版)
温度 T、物質量 n の平衡状態における、狭義の理想気体の内部エネルギー U は U = c n R T = c N k B T {\displaystyle U=cnRT=cNk_{\text{B}}T} で表される。 構成粒子を剛体とみなせる場合、比例係数 c は粒子1個当たりの自由度の 1/2 に相当する。内部自由度のない単原子理想気体であれば c = 3/2 である。剛体回転子とみなせる直線分子なら内部自由度が 2 なので c = 5/2、剛体回転子とみなせる非直線分子なら内部自由度が 3 なので c = 3 である。実在の分子で剛体回転子とみなせる分子は少ない。例えば一酸化炭素 CO は c = 2.50 だが、二酸化炭素 CO2 は c = 3.46 である。水蒸気 H2O は c = 3.04 だが、二酸化硫黄 SO2 は c = 3.80 である。二原子分子に限っても塩素 Cl2 は c = 3.08 であって、5/2 よりもむしろ 3 に近い。希ガス、酸素、窒素、水蒸気などの少数の例外を除けば、比例係数 c は分子式から手計算で求められる数値ではない。ファンデルワールス定数 a, b と同様に、比例係数 c は実際の気体の熱力学的性質を再現するように定められるパラメータである。また、剛体回転子とはみなせない分子の標準定積熱容量は、温度により少なからず変化する。それにも関わらず狭義の理想気体という気体の理論モデルをあえて考えるのは、エントロピーなどの表式がきわめて簡単になるからである。また、内部エネルギーを表す近似式としてそれで十分な場面も多い。とくに空気の主成分である酸素、窒素、水蒸気は(結露しない限り)比較的広い温度・圧力範囲で狭義の理想気体とみなせる。 温度 T、質量 m の平衡状態における、狭義の理想気体の内部エネルギー U は U = m c V T {\displaystyle U=mc_{V}T} で表される。狭義の理想気体の定積比熱容量 cV は、温度に依らない気体に固有の定数である。 熱力学関数としては、エントロピー S 、体積 V、物質量 n が内部エネルギーの自然な変数である。この考え方で表すと、1成分理想気体の内部エネルギーは U ( S , V , n ) = U 0 ( n n 0 ) γ ( V V 0 ) − ( γ − 1 ) exp [ γ − 1 R ( S n − S 0 n 0 ) ] {\displaystyle U(S,V,n)=U_{0}\left({\frac {n}{n_{0}}}\right)^{\gamma }\left({\frac {V}{V_{0}}}\right)^{-(\gamma -1)}\exp \left[{\frac {\gamma -1}{R}}\left({\frac {S}{n}}-{\frac {S_{0}}{n_{0}}}\right)\right]} となる。ただし添え字の 0 は適当に選んだ基準値を表す。
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