溶融発泡成形法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 08:23 UTC 版)
加熱溶融させた合成樹脂に気泡を生成させる溶融発泡成形法は、発泡剤を混練した原料を改めて発泡させながら成形する方法(二段法)と、ガスを押出機に吹き込みながら連続成形する方法(一段法)などがある。前者の発泡工程も、炉での加熱や金型内部での加熱加圧する方法などがある。 この成形法では、材料である合成樹脂が持つ粘度変化の温度依存性が大きく関わる。熱可塑性樹脂は一般に溶融状態から温度を下げると粘度が高まるが、非晶性PSのようにこの曲線が緩やかなものは形成された気泡壁が安定する。それに対しポリオレフィンは急激に粘度が変化する性質を持つため、高分子を架橋させる必要がある。架橋の化学的手段では、分解開始温度(ラジカル発生開始温度)が合成樹脂の融点よりも高く分解温度よりも低い有機過酸化物(ジクミルパーオキシドなど)が用いられる。物理的手段では、電子線を放射して水素を発生させながら架橋する。また、アルカン類など吸熱反応を伴う揮発性発泡剤を用いて発泡時の樹脂温度を低く抑え粘度上昇を図る手段や、PEなどでは酢酸ビニルとの共重合材料を用いて粘弾性曲線を緩やかにする方法もある。実際の成形では、これらの対策が複合的に用いられる。 溶融発泡成形法は、PEやPPの発泡成形や押出PS・PVCなど、またシートPPやPS(PSペーパー)などの製造にて採用される。エンジニアリングプラスチックでも変性ポリフェニレンエーテルやポリアミドの発泡品がある。発泡剤には熱分解性(アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなど)や揮発性(ブタン・ペンタンなどの低級アルカン、ハロゲン化炭化水素、炭酸ガス、窒素ガスなど)が用いられる。その他の材料では、金属酸化物や尿素系などの発泡助剤(核剤)、架橋促進剤や気泡調整剤、改質のための充填剤や難燃剤などが使われる。 一段法では、一般に2台の押出機を直列に繋いだ設備が用いられる。1台目の押出機では原材料を溶融させ、シリンダーの中間部分から物理的発泡剤を投入し混合する。ここでは高混練を行うため押出機の運転条件は高温で樹脂を押し出すよう設定される。それに対して2台目は、圧力を上げながら温度を下げつつ均一化し、実際に押し出す。そのため、この2台目は大口径の機械と狭いスクリュー山幅の設備を使い、低速で運転される。
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