毛色に関連する主な遺伝子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 08:00 UTC 版)
「馬の毛色」の記事における「毛色に関連する主な遺伝子」の解説
KITMATPSTX17DUNMC1RASIPW / -・ ・ ・ ・ ・ 白毛 SB1 / SB1・ ・ ・ ・ ・ 白毛 w / wCcr / Ccr・ ・ ・ ・ 佐目毛 w / wC / -G / -・ ・ ・ 芦毛 Rn/Rn, Rn/wC / -g / g・ ・ ・ (粕毛の要素を追加) w / wC / Ccrg / g・ E / -・ 河原毛 w / wC / Ccrg / g・ e / e・ 月毛 w / wC / Cg / gD / -・ ・ 薄墨毛 w / wC / Cg / gd / dE / -A / -鹿毛または黒鹿毛 w / wC / Cg / gd / dE / -At/At, At/a青鹿毛 w / wC / Cg / gd / dE / -a / a青毛 w / wC / Cg / gd / de / e・ 栗毛または栃栗毛 毛色に関連のある遺伝子をリストする。右図にぶち毛を除く主要な13の毛色と、その遺伝子型の関係を示す(何れも一部異説あり)。 MC1R: 3番染色体に存在するメラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R)をコードする遺伝子であり、鹿毛馬における色の濃さと模様に関連する。この受容体はMSHの指示を受け取りアデニル酸シクラーゼを活性化、エウメラニンの合成を促進する。結果黒っぽい色になる。表中ではEが野生型である。野生型の他に馬ではS83F変異型(表中ではeと表記)が知られている。S83Fは機能上の問題によりcAMPが合成されず、フェオメラニンの合成が促進され、結果赤っぽい毛色になる。 ASIP: 22番染色体に存在するアグーチシグナルタンパク(ASIP)をコードする遺伝子であり、鹿毛/青毛に関連する。ASIPはMSHを拮抗阻害し、MC1Rの働きを抑えるとともに体に模様をつける。表中ではAが鹿毛遺伝子、aが青毛遺伝子である。このほか、モウコノウマの野生型(A+)や、青鹿毛を発現する変異型も想定されている(At)。A+>A>At>aの順に優性である。 KIT: 3番染色体にコードされている幹細胞の分化に関与する遺伝子である。体幹部神経堤からのメラノサイトの分化と移動に関与する機構が毛色に関連していると思われる。幾つかの変異が知られており、これらはブチ毛や白毛を誘発する。なお、白毛遺伝子をホモで持つと発生段階で死亡すると言われているが、これを否定する研究もある。何れにせよ、白毛遺伝子が特定されたのは2007年とごく最近であり、変異型も多岐に及ぶ(白毛遺伝子だけで少なくとも10種以上存在する)ため、未解明な部分が多い。 MATP: 21番染色体に存在する膜関連輸送タンパク質遺伝子の一つ。佐目毛、河原毛、月毛に関連する。メラニン合成におけるMATPの働きは不明であるが、変位すると色素異常を引き起こす。通常の野生型(C)の他に、馬ではG457A変異型(Ccr)が知られており、この変異型を持つ個体は体色が薄くなる。不完全優性遺伝子でありその働きはヘテロよりもホモの方が強い。なお、ヒトにおけるMATPの変異は眼皮膚白皮症IV型(アルビノ)を誘発する。佐目毛、河原毛、月毛がサラブレッドで出ないのは、遺伝子集団内にこの変異遺伝子を持たないことによる。 STX17: 膜貫通受容体であり、メラノサイトの分化と輸送に関連するとされる。芦毛発生のメカニズムは長く不明であったが、2008年にスウェーデンの研究者らによって、25番染色体に存在するSTX17の変異が芦毛の原因になることが解明された。ただし、実際に変異が生じているのはエキソンではなく、イントロンであり(正確には第6イントロンの繰り返し配列4600塩基が重複している)、詳細な機能は分かっていない。おそらくメラノサイトの分化が異常に亢進、このため皮膚のメラノサイト密度が高くなり黒く着色するとともに、毛根のメラノサイト幹細胞が早期に枯渇し、加齢とともに体毛が白くなっていくと言われている。表中ではgが野生型、芦毛を引き起こす変異型をGと表現する。 表の見方 優性・劣性どちらの遺伝子が入っても、発現する毛色に影響を与えない場合は"-"で表している。"・"は、この遺伝子の働きが他の遺伝子によって抑えられる、あるいは隠されることを示す。
※この「毛色に関連する主な遺伝子」の解説は、「馬の毛色」の解説の一部です。
「毛色に関連する主な遺伝子」を含む「馬の毛色」の記事については、「馬の毛色」の概要を参照ください。
- 毛色に関連する主な遺伝子のページへのリンク