毛色の決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 08:00 UTC 版)
少なくとも数十の遺伝子が馬の毛色の決定に関わっている。このうちアグーチシグナリングタンパク(ASIP:agouti-signalingprotein)遺伝子、メラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R:melanocortin-1-receptor)遺伝子の2つについてはよく研究されている。 MC1Rは細胞内のcAMP濃度を調整することで間接的にメラニン合成に関与する。MC1Rにメラノサイト刺激ホルモン(MSH:melanocyte-stimulating hormone)が結合することによってGタンパク質を経てアデニル酸シクラーゼが活性化、ATPからcAMPが合成され、最終的にエウメラニンの合成が促進される。 対して、ASIP濃度が高いとMSHとMC1Rの結合が阻害され、cAMPが合成量が低下する。よってフェオメラニンの合成へと傾く。なお、ここまでの過程は多くの動物で共通している。 馬の毛色のうち少なくとも鹿毛、青毛、栗毛を上記メカニズムで説明できる。野生型、つまりMC1R、MSH、ASIP何れもバランスが取れている場合、エウメラニンとフェオメラニンが適度に合成され茶色っぽくなる。さらに馬のアグーチ遺伝子は四肢・長毛では転写量が低く制御されているため、これらの部位ではASIPが合成されずエウメラニン優位の黒色になる。この状態は鹿毛と呼ばれる。 また、仮にASIPの活性を欠く場合、MSHによりMC1Rが過剰に活性化され、全身エウメラニンによる真っ黒になる。これは青毛と呼ばれる。一方、MC1Rが変異するなどして活性を失った場合、エウメラニンよりもフェオメラニンの合成に傾き、栗のような色になる。同時に、MC1Rを欠くとASIPによる模様もつかないため、全身が一様に着色する。つまり栗毛となる。
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