正式登録とその後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 23:01 UTC 版)
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の記事における「正式登録とその後」の解説
開会した第39回世界遺産委員会では、日韓外相会談で日本が応援することを約束していた韓国の「百済歴史地区」の登録は全会一致で決まったが、現地時間の2015年7月4日夜に行われる予定だった明治日本の産業革命遺産の審議は調整がつかなかったため、5日の夜に延期された。 議長国ドイツのマリア・ベーマー議長は、自国の世界遺産である「エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群」(第二次世界大戦時の強制労働の展示をしているルール博物館がある)の例を挙げつつ、両国の調整にあたった。また、日本としては混乱が長引いて翌年以降に審議がずれることを回避したい意向があった。その理由としては、すでに翌年の審議のために「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を推薦していてそちらの審議に影響させたくないこと、日本の委員国としての任期が今年で切れるのに対し、韓国は翌年も委員国のままでいることなどが挙げられている。 そして、7月5日、土壇場で合意が成立し遺産は登録された。日本側は韓国が主張した「強制労働」(英語: forced labor) の表現を避けつつ、「労働を強いられた」(英語: forced to work) 人々がいたことを表明し、韓国側も審議の場での「強制労働」への言及を避けた。決議案には日本の発言に留意する旨の脚注が付けられた。この玉虫色の決着について、日本側は「強制労働」を意味しないことを強調したのに対し、韓国側は日本が強制的な労役の存在を国際社会で認めたと主張した。この決着について、日本の外務省関係者からは、日本での嫌韓の拡大を懸念する声も上がった。 一連の騒動に関し、『朝日新聞』は社説で日韓双方について「実に見苦しかった」と苦言を呈した。『毎日新聞』も社説で、日韓双方の振る舞いについて「互いを傷つけるだけの不毛なもの」と批判した。両紙の社説が日韓双方に今後の努力を求めるものであったのに対し、『読売新聞』の社説は韓国側の政治工作を残念なものと指摘しつつ、日本側の妥協についても韓国の「ゴネ得」を許した面があるとした。『産経新聞』も社説で、韓国の主張や介入を批判したうえで、日本の対応を行き過ぎた配慮や油断であるとし、大きな禍根を残したと批判した。 イギリスのガーディアンが「日本の施設が強制労働を認め世界遺産に」と報じる等、多くの欧米メディアは「強制労働」という文言を用いて明治日本の産業革命遺産の登録を紹介しており、一部には「奴隷労働」と表現する報道もあった。 世界遺産の登録後、韓国政府は松下村塾(山口県萩市)に対しても批判の矛先を向け、攻撃した。また、韓国政府の関係者は、今後、日本が暫定リストに記載している金を中心とする佐渡鉱山の遺産群を推薦した場合、そこでも朝鮮半島出身者の「強制労働」があったという認識に基づき、日韓の外交問題となる可能性を示している。
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