横断歩道・自転車横断帯における義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/09 08:25 UTC 版)
「横断歩道」の記事における「横断歩道・自転車横断帯における義務」の解説
横断歩道・自転車横断帯(赤信号等により横断禁止されているものを除く)を横断している歩行者・自転車に衝突し交通事故を起こした場合、刑事処分上は重大な過失があるとされ、民事上も自動車側の過失割合は基本割合で100%とされ、横断側が死傷した場合には過失運転致死傷罪に問われるなど、きわめて重い責任が課せられている。 反対に、歩行者・自転車側には横断歩道や自転車横断帯が付近にあるにもかかわらず、横断歩道・自転車横断帯を渡らない場合は、歩行者・自転車側の過失が重めに評価されることになる。通常の道路を歩行者が横断して事故に遭った場合、歩行者側の過失割合は基本割合で20%であるが、付近に横断歩道があるにも関わらず横断歩道を使わずに横断した場合は歩行者側の過失が通常30%と評価される。また、横断歩道での事故であっても歩行者側に全く過失が付かないとは限らないが、仮に直前横断などをされたとしても必ず安全に停止する義務が車両等の運転者には課せられている。 しかし、信号のない横断歩道・自転車横断帯は警察調査によるドライバーのアンケートでは停止しないとした回答者が9割程度となっているとされる。2019年のアンケートでは停止すると答えたドライバーが17%に増えたものの、滋賀県では11.3%、京都府では5%にとどまっている。一方JAFの調査では長野県は2016年の調査開始から一時停止が最も高く、過去最高の68.6%となっている。 (車両側の義務) 車両等は、横断歩道・自転車横断帯に接近する場合には、原則として、横断歩道・自転車横断帯の直前(停止線がある場合はその位置。以下直前等。)で停止できるような速度で進行しなければならない(道路交通法第38条第1項)。すなわち、原則としては、横断歩道・自転車横断帯の存在自体が、横断歩道・自転車横断帯の上に赤点滅の信号(一時停止)があるのと同様の効果をもたらす。つまり、自動車がブレーキを掛ける事なく漫然と横断歩道・自転車横断帯を通過しようとする時点で、既に過失責任が生じる可能性のある行為を行っていることになる。 ただし、上記の義務は、「歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き」(同項)と規定されている。すなわち、その横断歩道・自転車横断帯において歩行者・自転車が横断する可能性が全くない場合に限ってはじめて解除されるものである。 横断歩道・自転車横断帯によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者・自転車があるときは、当該横断歩道・自転車横断帯の直前等で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない(同項)。一般的にも理解されているべき譲歩優先義務である。ただし、上記の前段の規定により、あらかじめ横断歩道・自転車横断帯の直前等までに減速・徐行・停止する事により、横断があった場合には対処できるようにする義務がある。 横断歩道・自転車横断帯(赤信号等により横断が禁止されているものを除く)の上やその手前の直前に停止車両等がある場合には、その停止車両等の横を通り過ぎてその前に出ようとする時に、一時停止しなければならない(同条第2項)。車両の陰から横断歩行者が「飛び出し」たような事故類型を防止するための義務である。歩行者優先の横断歩道を歩行者が当然に横断する行為は本来「飛び出し」と表現するに当たらないが、いずれにせよ歩行者優先の法規定を守らなかったために、歩行者優先の例えば片側2車線以上の道路(右左折時の併走2車線以上を含む)において、横断歩道・自転車横断帯の上や直前において、ある車線の車両が停止しているような場合で、その停止車両の横の車線を通って横を通過する場合には、無条件に一時停止しなければならない。併走車線が無くとも、他の車両の横をすり抜けようとする場合も、追い越し、追い抜きによる場合でも、いずれも同様に無条件に一時停止しなければならない。ただし、赤信号等により横断禁止の場合には、義務が除外されている。 なお、対向車線側の横断歩道・自転車横断帯上付近に停止車両がある場合はこの義務は発生しないものと判例上も解されているが、現実問題としては同様に十分な注意を要する。 横断歩道・自転車横断帯とその手前30メートルでは、追い越しの他、追い抜きも禁止される(いずれも軽車両に対してを除く)。前記の規定の類型である。規定の場所では、横の車線等を進行している車両等よりも高い速度を出して前方に出ることが禁止(これは追い抜きにあたる)される。また、横の車線等を進行している車両等が減速した場合、自車線等の方も減速して、その前方に出ないようにしなければならない。 このような義務はおおむね「赤信号等により横断禁止の場合は除く」となっている。これはあくまで歩行者側が横断禁止かどうかが問題であるので、横断歩道側の信号が赤信号の箇所と消灯のケースの両方が存在する車両側が黄色の点滅信号の場合には、歩行者の横断を禁止する規則は何もないため、車両側は原則どおり歩行者等に対して譲歩優先義務が発生する。このような黄色点滅信号を擁する交差点は、深夜帯などには幹線道路であっても多く見られる。 これらの義務に違反した場合は点数は2点で普通車の場合9,000円の反則金が課せられることになっている。 以上の法令による規定から、法令を遵守していれば横断歩道・自転車横断帯上での対横断の交通事故は発生しない事が法的には期待されており、裁判上も現にそのように運用されている。 その他、横断歩道及び前後5メートル以内の部分での駐停車禁止が規定されている(法44条1号、3号)。 また、自転車横断帯に直交(車道を通行)する自動車や自転車等の車両は、自転車横断帯を横断する自転車に対して譲歩優先しなければならない。歩行者、自転車側の義務としては、 歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない(法12条1項)。 自転車は、道路を横断しようとするときは、自転車横断帯がある場所の附近においては、その自転車横断帯によって道路を横断しなければならない(法63条6項)。 といったものがある。
※この「横断歩道・自転車横断帯における義務」の解説は、「横断歩道」の解説の一部です。
「横断歩道・自転車横断帯における義務」を含む「横断歩道」の記事については、「横断歩道」の概要を参照ください。
- 横断歩道・自転車横断帯における義務のページへのリンク