松代鉱山の霰石産地とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 松代鉱山の霰石産地の意味・解説 

松代鉱山の霰石産地

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/11 07:18 UTC 版)

松代鉱山の霰石。直径約20センチほどの球果状のもの。
島根県立三瓶自然館(サヒメル)常設展示物[† 1]。2021年3月26日撮影。

松代鉱山の霰石産地(まつしろこうざんのあられいしさんち)とは、島根県大田市久利町松代にある、アラレ石団塊の状態で産出する国の天然記念物に指定された地層である[1][2][3][4]

霰石(あられいし、aragonite、アラゴナイト)とは炭酸カルシウムで組織された炭酸塩鉱物の一種で、様々な形状の結晶があり一般的には小さく微細なものが多く、さほど珍しいものではないが、ここ松代鉱山の霰石は黄色がかった乳白色を帯びた団塊の状態で産出し、中には直径30cmを超えるものが含まれる[1]。これほど大きな霰石の団塊が多数産出する地層は世界的にも珍しいことから[4]、産出する地点が1959年昭和34年)7月24日に国の天然記念物に指定された[1][2][3][5][6]

解説

松代鉱山の
霰石産地
松代鉱山の霰石産地の位置
閉山した松代鉱山を東方の島根県道46号大田桜江線より撮影。2021年3月26日撮影。

松代鉱山の霰石産地は島根県中部の大田市中心市街地から南西方向に約4キロメートルほどの、同市久利町松代地区と同市長久町延里地区にまたがる松代鉱山(廃坑・閉山)の一角に所在する[7]。この場所は世界遺産石見銀山の鉱山町である大森町から流れる静間川水系銀山川の8キロメートルほど下流左岸の小高い丘陵上に位置している。

松代鉱山は石膏を産出する鉱山で、明治時代後期に採掘がはじまり1970年代まで操業していたが[7]、今日では閉山しているため鉱山跡地への立ち入りは出来ない。霰石はこの鉱山の石膏を採掘するために掘られた坑道から出る掘削土中の、風化して粘土化した火砕岩の中から産出されたが[8]、鉱山の稼働中は石膏以外の鉱物は霰石も含め利用価値のないものとして廃棄されていたという[4]。しかし鉱物学結晶学の観点からは、古くからその学術的価値や希少性が指摘されており、1934年(昭和9年)に島根県が編集作成した『島根縣下指定史蹟名勝天然記念物』[9]、および1938年(昭和13年)の『島根縣指定史蹟名勝天然記念物並国宝概説』では「霰石産地」として詳細な解説文が記載されており、すでに1922年大正11年)6月28日付で天然記念物に指定されている[10]。ただし実際に国の天然記念物に指定されたのは、仮指定から37年後の1959年(昭和34年)7月24日である[1]

産出する霰石は三連偽六方双晶をつくり[11][† 2]、主成分は炭酸カルシウムであるが、微量のストロンチウムが含まれ、まれに亜鉛が含まれることもある[1]。断面は樹脂光沢をもち[1]菊の花のような模様に見える美しいもので[7]鉱物学上の価値が高い[1][8]

天然記念物に指定された松代鉱山産の霰石は地中にあるため指定地では見ることが出来ず、実物は島根県立三瓶自然館(サヒメル)や石見銀山資料館[11]、大田市役所[12]などが保有管理しており、展示期間中は見学することができる。また、東京の上野恩賜公園内に所在する国立科学博物館上野本館にも、松代鉱山から産出した「あられ石」の実物が常設展示されている[13]

交通アクセス

所在地
  • 島根県大田市久利町松代。
交通
  • JR山陰本線大田市駅より石見交通バスに乗車。松代下車[7]。ただし、天然記念物は産出地としての指定であり、霰石は地中にあるため指定地を訪れても見ることは出来ない。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ a b c 島根県立三瓶自然館(サヒメル)職員立会いのもと、2021年3月26日撮影。
  2. ^ 結晶学における接頭語の「偽」の意味については岩崎(1974)の論文も参照。岩崎準「結晶解析における偽対称と偽構造」『日本結晶学会誌』第16巻第2号、日本結晶学会、1974年、 155-179頁、 doi:10.5940/jcrsj.16.155ISSN 0369-4585NAID 1300007905332021年6月1日閲覧。

出典

  1. ^ a b c d e f g 矢嶋(1995)、p.1002、p.1004。
  2. ^ a b 松代鉱山の霰石産地(国指定文化財等データベース) 文化庁ウェブサイト、2021年4月9日閲覧。
  3. ^ a b 松代鉱山の霰石産地(文化遺産オンライン) 文化庁ウェブサイト、2021年4月9日閲覧。
  4. ^ a b c 松代鉱山の霰(あられ)石産地 おおだwebミュージアム、2021年4月9日閲覧。
  5. ^ 文化庁文化財保護部監修(1971)、p.249。
  6. ^ 島根県大田市指定文化財一覧表 令和元年12月26日現在 (PDF) 島根県大田市公式ホームページ 2021年4月9日閲覧。
  7. ^ a b c d 松代鉱山の霰石 しまね観光ナビ 島根県公式観光ガイド、2021年4月9日閲覧。
  8. ^ a b 文化庁文化財保護部監修(1971)、p.248。
  9. ^ 『島根縣下指定史蹟名勝天然記念物』 1934年2月 pp.81-82, NCID BB14760003, 島根県
  10. ^ 昭和13年3月 『島根縣指定史蹟名勝天然記念物並国宝概説』(参照:国立国会図書館デジタルコレクション、146コマ目、および147コマ目)2021年4月9日閲覧。
  11. ^ a b 島根県の歴史散歩編集委員会編(2008)、p.154。
  12. ^ 松代鉱山の霰石が里帰りしました めざせ!日本遺産〜火山からの贈り物〜島根県大田市、2021年4月9日閲覧。
  13. ^ あられ石 国立科学博物館 常設展示データベース、2021年4月9日閲覧。

参考文献・資料

関連項目

外部リンク


座標: 北緯35度10分23.7秒 東経132度28分59.4秒 / 北緯35.173250度 東経132.483167度 / 35.173250; 132.483167



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「松代鉱山の霰石産地」の関連用語

松代鉱山の霰石産地のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



松代鉱山の霰石産地のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2025 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの松代鉱山の霰石産地 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS