本映画の特色
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 03:13 UTC 版)
批評家からは、本作品のドイツ表現主義の手法や、奇抜で歪んだセットのデザイン、そして卓越した視覚的効果において、今日でも世界的に高く評価されている。フィルム・ノワール、およびホラー映画に影響を与えた重要な作品としても、位置づけられることが多い。最初期のホラー映画の一作品としても挙げられ、以降数十年間、アルフレッド・ヒッチコックなど、多くの映画監督が手本としていたことも指摘される。 以下が本作品の主な特色としてあげられる。 セット美術:ほぼすべてのショットにおいて、歪んだセット美術が使用されている。テント、柱、ドア、壁、煙突、屋根などがすべて平衡感覚が狂った状態で描かれており、床が水平でないこともある。また、白と黒のコントラストが多用され、照明もそれを強調している。ただし最初と最後の精神病院の庭(現実世界)のシーンだけはごく普通のセットである。 メイク:チェザーレの、目の周りを隈取したような奇抜なメイクは、不安感を煽るものである。また、衣装も奇抜なデザインで作られており、チェザーレの全身タイツのような黒の衣装や、拘束衣が例として挙げられる。 字幕:カリガリ博士の強迫観念を示す場面では、すでに撮影されたフィルムに文字が書き込まれ、博士の姿とともに文字を見せ、心理状態(ドイツ語で「カリガリ博士にならなければならない」のフレーズが繰り返し現れる)を実体化させ、カリガリ博士の心理をより印象づけている。 アイリスショットの多用:カメラに絞りをつけて撮影するショットをアイリスショットという。初期映画では、場面場面のつなぎを、特定の人物に絞りをつけて閉め(アイリス・アウト)、次の場面において、また人物に絞りをつけて開け(アイリス・イン)場面を切り替える方法が使用されていたが、本作品では、場面の切り替え以外でもアイリス・ショットを多用し、不安感をあおったり、注意を喚起したりする手法が多用されている。 誇張された演技:他のサイレント映画に比べても、登場人物たちの演技は感情や身振りをかなり誇張されている。特にカリガリ博士と、フランシスの演技においては、他の人物より表情・身振りが強調されているとともに、場面に応じて顕著に異なった演技スタイルを用いている。 屋内での撮影:すべての撮影を、屋内でセットを使用して行っている。自然の日光を一切使用せず、日光によりできる影も照明を使用して作られたものである。 家具のデフォルメ化:登場する家具も、実用的なものというよりは、歪んだセット美術に合わせて作られた奇抜なものが多い。背もたれの高すぎる椅子はその一例である。
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