有限要素法による連続体の振動への応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:37 UTC 版)
「線形多自由度系の振動」の記事における「有限要素法による連続体の振動への応用」の解説
多自由度系では、質点または剛体から成る系を想定し、剛性、減衰、慣性などの振動特性も局所的に集中して系内で点在しているというモデルを考えていた。一方で、実際の物体は、物体自体が変形する。実際の物体は連続体としての性質を有しており、質量、剛性などは連続的に系内に分布しているモデルとなる。実際の問題では、多自由度系に近似して取り扱っても十分な場合も多いが、振動時の機械・構造物の各部の変形や応力といったものを知るには連続体として取り扱う必要ある。 連続体の振動の運動方程式は時間と空間に関する偏微分方程式で記述され、厳密解が得られることは限られる。実際の複雑な形状の構造物で連続体の振動を扱うには、実用的には有限要素法という手法が用いられる。有限要素法では、対象の連続体を小さな有限要素に分割し、連続体を多自由度系に置き換えて解を計算する。有限要素法においても、線形多自由度系の理論にもとづくモード解析手法が強力な効果を発揮し、振動解析が精度良くかつ容易にできるようになる。 有限要素法による振動解析では、立てられた振動数方程式の数値計算を行い、まず固有振動数と固有モードを得る。次いで、固有モードの直交性を利用して周波数応答関数を得て、応答解析を行う。もし、定式化された運動方程式が1万自由度だとしたら、解くべき方程式は1万元の2次連立微分方程式となり、コンピュータを用いても計算に長時間を要する。しかし、モード解析手法を用いれば、1自由度系の解を1万回解いて、重ね合わせるだけで解が得られる。さらに、対象が大規模自由度になったとしても、自由度の分だけ現れるモードを全て計算する必要性もない。実用的に興味のある外力振動数を含む次数までモードの重ね合わせでも、十分な精度の振動応答解析が可能となる。上記の1万自由度の例えで言えば、1自由度系の解を1万回解く必要もなく、もっと少ない回数の計算で事足りるようになる。これらの長所によって、モード解析手法は有限要素法による振動解析で絶大な威力を発揮し、数十万規模の自由度を扱うような有限要素法計算であっても、モード解析手法の適用によって特段の支障なく計算が可能となる。
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