暗黙に保証された補助金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 02:11 UTC 版)
「大きすぎて潰せない」の記事における「暗黙に保証された補助金」の解説
「大きすぎて潰せない」銀行の預金と負債は全額政府によって事実上保証されているため、大口の預金者や投資家は、大きすぎて潰せない銀行への投資を小規模な銀行への預金よりも安全な投資だと考えている。したがって、大手銀行は、小規模な銀行よりも低い金利で預金者や投資家から資金を調達できる。 2009年10月、当時のFDICの理事長であったシェイラ・ベアは、次のようにコメントした。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}「『大きすぎてつぶせない』は悪化してしまった。かつては目に見えなかったものが、今やはっきりと見える。巨大銀行と小規模な銀行との間に競争力の格差が生じている。小さな銀行なら破綻するかもしれないと、誰もが知っているからだ。それゆえに、小さな銀行が資金調達するコストが高騰している。」 研究では、銀行が大きすぎて潰せない状態の閾値であると一般に見なされる資産水準を超える合併に対して進んでプレミアムを支払うことが明らかになっている。 経済政策研究センターが実施した研究によれば、2008年第4四半期に米国で「大きすぎて潰せない」政策が正式に実施された後、資産規模が1,000億ドルを超える銀行の資金コストと小規模銀行の資金コストの差が劇的に拡大したことが明らかになった。この大銀行の資金コストのシフトは、実質的には、資産規模が1,000億ドルを超える米国の18行への年間340億ドルに相当する間接的な「大きすぎて潰せない」補助金といえるものであった。 Bloomberg Viewの編集者は、暗黙の政府支援により新規調達を0.8パーセント有利に行えたことを踏まえ、米国の大手銀行10行に年間830億ドルの助成金があったと推定した。つまり、大手銀行の利益は主に納税者の支援に基づく幻影である。 Frederic SchweikhardとZoe Tsesmelidakisによる別の研究 によれば、2007年から2010年にかけて、アメリカの最大手銀行には政府によるベイルアウトというセーフティネットがあることが認識されたことで、節約できた金額は1,200億ドルと推定した。アメリカの最大手銀行の推定節約額は、シティグループで530億ドル、バンク・オブ・アメリカで320億ドル、 JPモルガンで100億ドル、ウェルズファーゴで80億ドル、 AIGで40億ドルだった。本研究では、ベイルアウトの終了を約束したドッド・フランク法の成立によって、「大きすぎて潰せない」金融機関のクレジット価格があがる(すなわち、暗黙の補助金が減る)ことは一切起きなかったことが指摘されている。 2013年のある研究(Acharya、Anginer、Warburton)では、大規模な金融機関に対する暗黙の政府支援によって提供される資金調達コストの減少幅が測定された。クレジットスプレッドは、1990年から2010年までの期間平均に関して約28ベーシスポイント(0.28%)低く、ピークとなる2009年には120ベーシスポイントを超えていた。 2010年には、最大手銀行への暗黙の補助金は1,000億ドル近くの価値があった。著者らは、「ドッド・フランク法の成立は政府の支援の期待を排除しなかった」と結論付けた。 経済学者のランドール・クロスナーは、大銀行と中小銀行の間の資金調達コストの差を評価するいくつかのアプローチをまとめた。この論文では、方法論について議論しており、大規模な金融機関に有利な点があるのかどうかという質問には具体的に答えてはいない。 2013年11月、信用格付機関ムーディーズは、米国の大手銀行8行が破産した場合に政府の支援を受けられるとはもはや想定していないと報告した。しかし、GAOは、金融危機が発生した場合、政治家と規制当局は依然として大手銀行とその債権者のベイルアウトという大きな圧力に直面するであろうと報告した。
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