昆虫の習性研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 03:05 UTC 版)
「ジャン・アンリ・ファーブル」の記事における「昆虫の習性研究」の解説
ファーブルはフンコロガシが大好きだったようで、昆虫記の第1巻はフンコロガシで始まり、後に再びフンコロガシの子育てについて追記している。その他の糞虫についても、子を守る行動などを詳しく記録している。また、ハチについては多くの種の行動を記録した。特に、狩りバチの習性、狩りの方法などについて詳しく報告している。狩り蜂が獲物を麻酔することは、彼の発見になるところである。また、彼はヌリハナバチを用いての帰巣実験も行なっている。自宅庭で飼育していたヌリハナバチに塗料をつけて自宅から4km程離れた川原で放し、どれ位の蜂が巣に帰ってこられるかを実験した。 それらの研究を通して、彼は昆虫の行動を支える本能というものについて、深く考えようとした。 ファーブルは自分の研究した多くの昆虫について、学術論文ではなく読み物の形で世に送り出した。彼には多くのファンがいたが、その多くは科学者ではなかった。1910年に開かれた「感謝の会 ファーブルの日」にはロマン・ロラン、メーテルリンク、エドモン・ロスタンなど名だたる文豪が参加した。彼に対してノーベル文学賞を与えるべきとの声があった程である(実際にはそれは叶わなかった)。 ただ、そこで問題とされたのは、彼が見ていないこと、想像したことをも、実際に見たかのように思える書き方をしている場合があることである。このような点で、科学者としてのファーブルを支持しない向きもある。 たとえばナガコガネグモの項では、その卵嚢が破裂して子供を外に出すかのような記述があるが、これは完全な創作らしい。日本語訳、特に子供向けではこの下りは省略されていることが多い。他にもナガコガネグモについては疑問のある記述が多く、それについては該当の項を参照されたい。それほど極端ではなくとも、第一巻第二章(虫籠)でタマコロガシが子供のための糞玉を作るに違いないが、それはいまだ見つけられていないことを説明した後、それはこのようなものであろう、という予想について極めて微にいり細にいり説明している。もちろんそれは予想であることを断った上のことであるが、しかし数種の糞虫についての観察を継ぎ合わせたもの、と言っているから、それなりの根拠があるように見える。しかし、後に発見されたものは随分と異なったものであった。こういったことは、他の観察の信頼度をも下げることとなろう。 他方、習性の研究と言うと、ただ漫然と昆虫を眺め、それを記録しただけのように見えるが、ファーブルは行動の研究に実験的手法を持ち込んだ点で、先進的であった。飼育する場合でも、必ず何通りかの対象を置いて、信頼性を確保しようとしている。例えば土の中に巣を作る虫を観察するために、瓶に虫を入れて紙で覆って暗くしておく場合は外で植木鉢に巣を作らせ、同じ時期に鉢をひっくり返し瓶の中と同じ状態であることを確認するという具合である。「その態度は現代のナチュラリストよりもはるかに機械論的」との評もある。
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