日本語の伝統的な時刻表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:21 UTC 版)
太陽が南中するころが午の刻だったことから、南中時刻を「午の正刻」と呼んだ。これが現代でも昼の12時ちょうどを表す「正午」の語源となっている。「午前」「午後」はその前後の時間ということである。 午後2時から3時ごろに仕事の手を休めてとる休憩時に軽食をとる習慣が江戸時代から始まった。この時間がおおよそ昼八つ、つまり「八つ時(やつどき)」であり、午後3時ごろに食べる間食を指す「おやつ」という言葉が生まれた。現代では「おやつ」は間食全般のことを指し、時刻には左右されない言葉になっている。 落語の演題である「時そば」では、「今何時(なんどき)だい?」の問いに「九つで」の応答を期待していたところ、「四つで」と答えられ、代金のごまかしに失敗するという落ちである。これは、「九つ」と「四つ」が隣接していることが承知されていないと、多少の唐突感がある。 「暮れ六つ」・「酉の刻」は古神道(こしんとう)に代表される民間信仰などの、宗教的な意味合いを持つ時刻の表現として、逢魔時(おうまがとき)といった。大禍時(おおまがとき)・逢う魔が時(おうまがとき)・逢う魔時(おうまどき)ともいい、黄昏時(たそがれどき)のことである。黄昏時は黄が太陽を表し、昏が暗いを意味する言葉である。「たそがれどき」は「誰彼時」とも表記し、「誰そ、彼」、つまり「そこにいる彼は誰だろう。良く分からない」といった薄暗い夕暮れの事象をそのまま言葉にしたものであり、本来の夕暮れを表す漢字の「黄昏」にこの「たそがれ」を読みとして合わせた。 丑三つ時(うしみつどき)も神域や常世(とこよ)へ誘う端境であると考えられ、古くは平安時代に呪術としての「丑の刻参り」が行われ、「草木も眠る丑三つ刻」といえば講談や落語の怪談の枕として使われる常套文句でもある。
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