日弁連による勧告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/05 03:03 UTC 版)
「三億円別件逮捕事件」の記事における「日弁連による勧告」の解説
この事件で、警察発表に追随し続けたメディアには世間から大きな非難が寄せられ、別件による誤認逮捕を招いた警察にも、法曹界を中心に大きな批判が巻き起こった。日本弁護士連合会(日弁連)人権擁護委員会も、12月20日の例会において「三億円別件逮捕調査特別委員会」を設置し、警察とメディアによる人権侵害の実態調査に乗り出した。また、A当人も翌1970年(昭和45年)2月に日弁連人権擁護委員会へ調査申立てを行った。 警察に対する調査の結果として委員会は、同年12月に警察庁長官、警視総監、各都道府県警察本部長、国家公安委員会、各都道府県公安委員会、最高裁長官、各高裁長官・地裁所長、検事総長、各高検検事長・地検検事正へ向けた警告を発し、「軽微で取るに足りない脅迫事件で逮捕して、これを三億円事件の取調に利用したといわざるをえない。このことは基本的人権の尊重を謳い、逮捕勾留など身柄拘束につき厳格なる令状主義による司法抑制を定めた憲法および刑事訴訟法に明らかに反し、許されない」と強く述べた。この調査結果は、逮捕状の発布にかかわった裁判官にまで警告を発している点で、異例のものとして注目を集めた。 続くメディアに対する調査結果として委員会は、アリバイ判明の端緒となったのも新聞報道であるという事実はあるにせよ、「別件逮捕の段階であり、かつ否定材料の存在することが捜査当局から発表されているにも拘らず、〔A〕氏の氏名を明らかにし、同氏が三億円事件についての容疑が極めて強い印象を与える強烈な記事を掲載したことは〔A〕氏の人権を侵害するものである。特に毎日新聞のこれに関する報道は、同社の自認するように〔A〕氏の人権を無視するものがあったといわねばならない」と結論した。翌1971年(昭和46年)3月、委員会は朝日・毎日・読売・日経・サンケイ・中日の6社社長に宛て、犯罪報道に当たっては被疑者の名誉と人権を尊重するよう勧告を発した。 その後、Aは毎日新聞社と警視庁に対し損害賠償を請求した。しかし、訴訟は弁護士に任せきりであったため、毎日新聞社とは30万円で和解し、警視庁に対する訴訟はなし崩し的に取り下げられたという。
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