文化が人に食へのタブーを課すのはなぜか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 07:34 UTC 版)
「食のタブー」の記事における「文化が人に食へのタブーを課すのはなぜか」の解説
イギリスの文化人類学者、メアリー・ダグラスの『汚穢と禁忌』によれば、食の禁忌は分類上の落ちこぼれが持つ中途半端な属性がケガレとされたことに理由があるとされている。たとえば牛やヤギは四足で蹄が割れており反芻胃を持つのに対し、豚は蹄が割れているが反芻をせず、また兎は反芻はするが蹄が割れていないなど、分類上中途半端であるがゆえに禁忌とされたことになる。 マーヴィン・ハリスは、宗教上の禁忌食の多くはコストとベネフィットの関係から、不経済な食料獲得を戒めたことに端を発した可能性を指摘している。たとえば、レビ記ではブタを食べることを禁じているが、森林開発が盛んだった紀元前1200年ごろのパレスチナでは、森を利用する養豚は非常にコストのかかる事業だったことによるという。ほかの禁断の動物も、人間の生活に有用な駄獣や、労力に見合わない狩猟の獲物がそのほとんどを占めている。また、ヴェーダ期のインドではウシは一般的な食物であり、牛肉は権力を維持するために民衆へ振る舞われる授与物だったが、急激な人口の増加によって紀元前600年ごろに供給が追いつかなくなり、バラモン層は菜食を呼びかけるようになった。ウシは農耕用の駄獣として不可欠な存在であったため、民衆がそれを食べる誘惑を断つためにヒンドゥー教では牛が聖獣と見做されるようになったという。 健康上の理由が禁忌につながった可能性もある。たとえば、未調理の豚肉を食べることは旋毛虫症、E型肝炎に罹患する恐れがあり、多くの海産物も食中毒の恐れが高いとされる場合があるが、これらの考え方は俗説にすぎないという批判もある(詳細はカシュルートを参照)。また中世日本においてしばしばフグ食の禁止令が出されたが、これは中毒死に対する対策であり健康上の理由による食のタブーと言える。これは現代においても(日本に限らず)資格を持たずに提供することを禁じる法律として残っている。
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