接頭辞・接尾辞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 06:09 UTC 版)
動詞の頭につける接頭辞が用いられる例として、「うちたおす・うッたわす」という場合がある。これは「撃ち倒す」や「打ち倒す」を指すのではなく、「うち」をもちいて「倒す」を強調しているだけである。もともと、この「うち」は、古語で用いられているもので「連銭葦毛の馬にうち跨り」「カンラカラカラとうち笑ひ」と同様の意味である。 「キャア・キャ」も動詞の頭につく接頭辞である。「酒を飲んだ」を「酒ばキャアくろた」、「恥をかいた」を「恥ばキャアかいた」などという。 接尾辞の代表例が「〜ばい」「〜たい」。例えば「いいよ」は「よかばい」「よかたい」となるのだが、両者のニュアンスはやや異なる。「よかばい」は自分が直接的対象の事柄への同意・許可をする返事、または、遠慮・拒否をする際等、「よかたい」は自分が間接的対象の事柄への同意・許可する返事、または、相手に同意・許可を求める際等に使用されるケースが多いと思われる(標準語で言えば「いいよ」と「いいじゃない」の様な感じ)が、確定的な法則ではない。「〜ばい」は標準語の「〜ぞ」「〜だぞ」に相当し、男性的な言葉であるが、女性が使う場面もときおり見られるようになってきている。 「~ばいた」 (「~ばい」と同じ) … 年配層では「~ばい」に「た」を加えた「~ばいた」が使われる。同様に語尾「~かい」も「~かいた」が使われることがある。「飯食わんかいた」(ご飯食べない?) 体言のあとに「〜よ」を付ける言い方は、標準語では女性的で、男性の場合は「〜だよ」と言うのに対し、熊本弁の場合は(イントネーションは違うが)男女の区別なく普通に使われる。例:「ごはんよ」「電話よ」。「〜ぞ」もやはり標準語と異なり、前に「だ」を付けない。例:俺がもらうとぞ(俺がもらうんだぞ)。俺が描いた絵ぞ(俺が描いた絵だぞ)。 接尾辞の「ごたる・ごた」は2通りの意味があり、1つは「〜の様だ」(〜の如くある、のウ音便で、「〜の如うある」が訛ったもの)で、たとえば「あん小学生は背の高うして、大人んごたる(=あの小学生は背が高くて、大人みたいだ)」のように用いる。もう1つは「〜したい」の意味で「酒を飲みたい」が「酒ば飲もごたる」となる。同様に「行こごたる」(=行きたい)、「食べよぅごたる」(=食べたい)、などと用いる。ただし、厳密に解釈すれば、双方共「如くある」のウ音便で、後者も「行こう如くある」すなわち「行きたい」である。 「〜がえ・〜げ」(=〜んち・〜の家) … 「こっが、あたがえな?」(=ここがあなたの家ですか?)。また、自分の家のことを「俺んち」などと言わずに「我が家・オッがえ」と言う人も多い。 「〜がつ・〜と」(=〜のもの) … 「こら、あたんがつな?・あたんとな?」(=これはあなたのものですか?)。「そら、オッがつたい・オレんとたい」(=それはオレのだよ)。名詞の後について所有代名詞化する。 「げな」(=だそうだ)…古語である伝達の助動詞「げな」が、熊本県北部(及び福岡県南部)では現在でも使われている。「明日ん練習休みげな。」(明日の練習は休みだそうだ。) 「〜(し)ぎゃ・(し)が」(=(し)に) … 「〜さんは、車の修理ばしぎゃ行っとらすばい。」(=〜さんは、車の修理をしに行っているよ。) 「〜(し)よる」(=〜(し)ている) … 動詞の後に付き、進行形を示す。「まだ食べよっ(よる)とたい」(=まだ食べている最中だよ)。この尊敬語が「〜(し)よらす」。進行形をあらわすものとしては、標準語の「〜(し)ている」に相当する「〜(し)とる」もある。これは現在進行中の状態の他に完了した状態も表すが(例:茶碗が割れとる)、「〜(し)よる」には完了の意味はない。 「〜ど」(=〜だろう?) … 用言のうしろに付いて疑問推定を表す(例:お前も行くど?、食べたかど?)。標準語の「だろう」が体言にも付く(例:お前だろう?)のに対し、「ど」は体言には付かない。 「〜にゃん・~なん」(=〜(し)なければならない) … 英語の「Must」にあたる助動詞。「そっはあたがせにゃん」(=それはあなたがしなければならない)。「勉強ば頑張らにゃんたい」(=勉強を頑張らなければならないよ)。 「~ぼ」 (「~ばい」と同じ。) … 語尾「~ばい」を「~ぼ」と言うことがある。「~ばい」よりも砕けた男言葉。同等か目下の者に使う。若い世代ではあまり使われない。 「わ〜」(=超〜) … 用言のまえに付いて強調を表す。わいさぎ、わいさし(=超大変)。わいた(=超痛い)
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