憲法3条裁判官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 07:30 UTC 版)
「アメリカ合衆国連邦裁判所」の記事における「憲法3条裁判官」の解説
最高裁判所、控訴裁判所、地方裁判所及び国際通商裁判所の裁判官は、合衆国憲法3条に基づいて任命されることから、「憲法3条裁判官 (Article III judge)」と呼ばれる。すなわち、これらの裁判官は、大統領が指名し、上院の助言と同意を得て大統領が任命した後は、終身制で定年の定めはなく、弾劾手続以外で罷免されることはない。また、在職中に報酬を減額されることがない。実際、連邦裁判官が70歳代後半や80歳代前半で職務を行っている例は珍しくなく、90歳代の裁判官もいる。 連邦裁判官への任命人事は、候補者のキャリア全般と学問的な業績に基づいて行われ、何らかの資格試験があるわけではない。候補者は、学問的・職業的経歴、執筆した論文、弁護士等として取り扱った法律事件、職業外の活動などについての詳細な書面を提出することが求められ、面接や身上調査を受けなければならない。優れた法律実務家(弁護士や検察官)、下位の連邦裁判所の裁判官、州裁判所の裁判官、法律学の教授などの中から指名・任命されるのが通常である。1945年から2000年の間に退官した全連邦裁判官1250人以上についての調査によれば、連邦裁判官に任命される平均年齢は50歳から55歳であった。裁判官になる前に裁判官以外の職種を最低一つは経験しているのが通常であり、二つ以上の職歴を持つ場合も多い。上記調査によれば、連邦裁判官に任命される直前の職業は、弁護士が38.9%、連邦又は州の裁判所が37.1%、検察官が11.4%、公務員が5.7%、連邦や州議会の議員が3.7%であった。そのほか、学者出身や実業家出身の裁判官もいる。 連邦裁判官の人事には、政治が大きな役割を果たす。大統領による候補者の選定は、上院議員の推薦する候補者リストや、大統領自身の政党の中から行われ、また候補者は上院司法委員会での聴聞会に出席して上院の多数による承認を得なければならないからである。裁判官は終身制のため、一度任命すると将来長期間にわたり政治的方向性に影響力を行使することができることから、共和党政権は保守派の裁判官を、民主党政権は比較的リベラルな裁判官を指名する傾向にある。連邦最高裁の裁判官が以前に政治家に対する貢献をしていた例は多く、また裁判官が大統領や政府高官と友人である例もしばしば見られる。控訴裁判所や地方裁判所の人事についても政治的対立は激しく、共和党政権の指名した保守派の候補者に対し、上院の民主党が承認を阻止しようとして、あるいは逆に民主党政権の指名したリベラルな候補者を上院共和党が阻止しようとして、空席を埋めるのに何年もかかる事態すら生じている。
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