当時の現場の環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 16:44 UTC 版)
「スリーマイル島原子力発電所事故」の記事における「当時の現場の環境」の解説
一次冷却系用のPORV(パイロットオペレーションリリーフバルブ、ソレノイド駆動の非常時圧力リリーフバルブ)の動作状況指示方式の欠陥(ソレノイドに通電しているか、通電していないか、でリリーフバルブの開閉を表示していたが、これは実際のパイロットの位置は反映されていなかった。 この不適切設計と、PORV動作終了後、ソレノイドがオフとなったものの、バルブが故障、実際にはPORVは開いたまま、水蒸気が放出されているにも関わらず、制御盤ではバルブが閉状態を示すランプが点灯していた。 PORVの構造、制御盤での動作状況は何を示すか(PORV開閉では無く、正しくはソレノイドはの通電のオン、オフ)についての詳しい教育不足により、制御盤の表示を盲目的に信じ、PORV故障の把握に時間を要した(異常に気付いたのはシフト交代したメンバーがPORVのテールパイプ温度異常に気づけたため) 炉内の液面位置を正しく計測する装置がなく、沸騰による水泡から水位を読み取ったため、炉内状況を正しく把握出来なかった。 PORVテールパイプ温度表示器は分かりづらい位置にあり、当初不具合原因の改名時の参考とされなかった。 オペレーターは原子炉通常運転時、コアでの高効率熱交換の為、核沸騰を維持する事を徹底教育されていた。 PORVによる圧力解放時、緊急給水ポンプも作動したが、PORV動作停止後、前記のとおり誤ったPORV情報から、リリーフ弁は閉じていると信じ、炉内圧力は低く、水位も十分有ると考え、炉内は冷却水過剰による圧力低下が生じはじめていると考え、核沸騰維持のためとして、緊急給水ポンプを停止してしまった。 コントロールパネル上の2つある出口弁の片方の表示ランプ上に別のスイッチに掛かっていた注意札が覆いかぶさった状態で見えにくくなっていた。 異常状態を表示する警告灯や警報音送出装置が多数設置されていた。しかし、そのことが逆に現場に混乱と疲弊を生じさせる結果となった。事故当時、137個もの警報灯が点灯する「クリスマス・ツリー現象」が生じ、また警報音も30秒間に85回も鳴り響く状況であり、後に運転員が「パネル板を外して窓の外へほうり出したくなった」と証言するほどであった。このことが作業員の精神的疲労の蓄積と冷静な思考を阻害させる要因になってしまい、現場の混乱度を高めてしまうこととなった。
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