弥生賞・スプリングステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 08:35 UTC 版)
「ハイセイコー」の記事における「弥生賞・スプリングステークス」の解説
陣営は移籍初戦として東京4歳ステークス(2月11日に東京競馬場で施行)に出走させようとしたが叶わず、3月4日、増沢末夫を鞍上に据えての弥生賞が移籍初戦となった。 「地方競馬の怪物」ハイセイコーの中央競馬移籍は当初から大きな話題を集め、ジャーナリズムは「野武士登場」「怪物出現」と書き立てた。弥生賞当日の中山競馬場には朝早くから観衆が集まり、およそ12万3000人の観客が入った。ハイセイコーがパドックに姿を現すと500kgを超す雄大な馬体を見た観客からはどよめきが起こり、発走前にハイセイコーがパドックから競走の行われるコースへ移動した際には、あまりの人の多さに金網近くにいた観客が苦しくなって観客席とコースとを仕切る金網を乗り越え、コース内に入りこむ騒ぎも発生した。しかし、ファンがハイセイコーが目の前を通るたびに歓声を上げたことによってハイセイコーは激しく入れ込んだ上に多量の汗をかき、レース直前に集合合図の旗が振られる前からスタンドはざわめいたことで、これによって興奮したハイセイコーはゲートに近づこうとしなかった。 陣営はレース前の調教の内容がよかったことから、「勝てる」というかなり強い見込みを持っていたが、芝の馬場を走るのも中山競馬場で走るのも初めてであったため若干の不安も抱いていた。スタートが切られるとハイセイコーが無事にゲートを出ただけで大歓声が上がり、好位置につけるとさらに歓声は大きくなった。しかし、この時のハイセイコーは調教の時とは異なって走りそうな手応えがなく、序盤4番手を追走し3番手で第4コーナーを回ったハイセイコーは単勝1.1倍の1番人気の支持に応える形で勝利を収めたものの、終始増沢に前進を促され、その増沢に手応えを感じさせないままに終わったレースぶりは陣営に不安を与え、「ハイセイコー勝ちましたが、苦しかった!」と実況された。鈴木勝太郎は弥生賞について「レース中にカッとなるところがあって、これは2000mまでの馬かなと思った。それに初めての芝を気にしたのか、直線で追ってもあんまり延びない。まわりで騒ぐほど強いとは思えなかった」と振り返っている。このレースには後にハイセイコーのライバルと目されるようになるタケホープも出走し、ハイセイコーから約7馬身離された7着に敗れていた。 弥生賞の内容に不満を覚えた陣営は、中2週で3月25日のスプリングステークスに出走させた。しかし、ここでも好位を進み直線で抜け出すというレース運びで勝ちはしたものの、陣営が期待していたほどのパフォーマンスを見せることはできなかった。レース後、2着に敗れたクリオンワードの騎手安田伊佐夫が増沢に「おめでとう」と声をかけたところ、増沢は「ありがとう。でも、頼りないな」と返答した。レース後のインタビューでも増沢の表情は冴えず、その模様を中継していたテレビ番組の出演者からは「まるで負けた騎手のインタビューみたいでした」と評された。陣営が弥生賞とスプリングステークスにおいて感じた共通の課題は、ハイセイコーが調教の時とは異なりレースでは自らハミを噛んで騎手の指示に従おうとしない(ハミ受けが悪い)ことであった。 スプリングステークスの後、専門家の間でもハイセイコーに対する評価は二分した。赤木駿介は、弥生賞とスプリングステークスのレースぶりはともにぎこちなく、「怪物という異名にふさわしいものを感じさせなかった」と評している。一方、当時競馬評論家として活動していた大橋巨泉は、弥生賞とスプリングステークスでのレースぶりを、中央競馬移籍に際し喧伝されていた「鋭い差し脚」や「並ぶ間もないスピード」は感じられず、その意味で「どうやらハイセイコーという馬は、われがわれが抱いていたイメージとは、やや違う馬のようであった」と前置きしたうえで、「タイムも速くなく、それほど凄い脚もみせないが、いつも必ず勝つ」、「五冠王シンザンのイメージがオーバーラップしつつある」と述べた。この大橋の分析にシンザンの管理調教師であった武田文吾は、「どだいシンザンと比較するのが間違い。ハイセイコーはまだ1冠もとっていない。とれるかどうかもわからない状態だ。シンザンはすでに"5冠"を制しているのだ」と反論した。しかし、阿部珠樹によると弥生賞のレース後には一部から「ダービーはおろか、三冠、いや全てのレースを勝ち、シンザンを超えるのではないか」という声が上がるようになっていたという。 前述のように、陣営は弥生賞とスプリングステークスにおける共通の課題として、ハイセイコーが調教の時とは異なりレースでは自らハミを噛んで騎手の指示に従おうとしない(ハミ受けが悪い)点を認識していたが、調教師の鈴木勝太郎はスプリングステークスの後、調教中にハイセイコーがハミを噛んではいるものの時折舌を遊ばせることに気づき、そのことがハミ受けの悪さに繋がっているのだろうと考えた。対策として陣営は、ハミ吊りを装着することにした。
※この「弥生賞・スプリングステークス」の解説は、「ハイセイコー」の解説の一部です。
「弥生賞・スプリングステークス」を含む「ハイセイコー」の記事については、「ハイセイコー」の概要を参照ください。
- 弥生賞・スプリングステークスのページへのリンク