差別と不安定な立場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 04:43 UTC 版)
アジア諸国は人種的に均一な国が多く、アジアの外からはアジア人は混血児に対して排他的とのステレオタイプ的解釈がなされることもあるが、アメラジアンへの処遇にはより複雑な面がある。アジアが貧しかった時代、朝鮮戦争やベトナム戦争当時は、アメリカ兵が出入りする店で働く女性を現地妻とするアメリカ兵もおり、そこから多くの子供が生まれた。このため、アメリカ兵相手の商売をする女性への偏見が、アメラジアンと称される子供への差別につながった。またこの差別は、貧しさのために多くの女性が豊かなアメリカ人になびいたという偏見に基づく現地の住民感情にも結びつき、母の職業がどうあれ米亜混血児全体に拡散した。 豊かになった1970年代以後の日本でも、米軍人との子を産んだことで母子が実家や親戚などから責められたり、勘当や絶縁、相続上での差別など不当な扱いを受けたり、社会に広がる反基地感情や反米感情の矛先がアメラジアンにむけられることもある。差別される子供は地元の子らと外見が違う事がいじめの対象となりうる。特にアフリカ系アメリカ人との間にできた子供に対してはその傾向が強い。 日本では、1984年の国籍法改正までは子の国籍に父の側からだけ認める父系血統主義をとっていたため、父の所在の分からない子供たちは一様に無国籍児となっていた(同年、母の側の国籍も取得できるよう父母両系に改正されたため解消)。沖縄県では、父が米国などに転勤して子供が母との暮らしをしている場合、国籍がないために教育を受けられないケースもあった。また、父と同居している場合は軍から基地内で教育を受ける援助が与えられるが、父が離れると軍の援助が停止され、教育費が高く学校に行けなくなることがあった。父が米国に別の家族を持っているため、父が本国の家族には日本での子供の存在を内緒にしていたという事情から渡米しにくい場合もあり、また日本語ができず義務教育で地元の学校に通うことのできない場合や、いじめが原因で地元の学校に通えない場合もあった。このため民間のアメラジアン向け学校が誕生し、こうした活動を受けて、地元自治体や日本政府も民間学校へ援助を行ったり義務教育扱いにするなどしている。 多くの国でアメラジアン支援のための運動や組織もあり、アメラジアンのアメリカ移民も続いている。一方でアメラジアンの中には(特に父が白人などの場合、フィリピンやタイなどで)俳優として人気を博する者もいる。
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