差別と法的保護
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/03 21:43 UTC 版)
2012年の研究によれば、無性愛者はゲイやレズビアン、バイセクシュアルなどの他の性的マイノリティに比べて、より不当な偏見や人間性の抹殺(英語版)、差別にさらされているという。同性愛と異性愛の人々の両方が、無性愛者のことを冷血で動物的な、抑制されていない人々と考えている。無性愛の活動家であり著述家・ブロガーであるジュリー・デッカーは、もっぱら無性愛者のコミュニティを標的にするセクシュアル・ハラスメントや暴力、矯正レイプ(英語版)を目にしてきた。しかし別の研究では、彼らが無性愛であるがゆえの深刻な差別を受けているとする証拠はほとんど見出せなかった。社会学者のマーク・カーリガンは、中立的地点から、「無性愛者はしばしば差別を経験しているが、それは嫌われるなどというよりはむしろ『人々が本当の意味で無性愛を理解しないことによる周縁化』の問題である」と論じている。 無性愛はまた、LGBTコミュニティからも偏見にさらされている。多くのLGBTの人々は、同性愛者でも両性愛者でもない人々はストレートに違いないと主張し、しばしば無性愛者をクィアの定義から排除しようとする。LGBTQのコミュニティを支援する名の知れた組織は数多く存在するが、これらの組織は一般に無性愛者には手を差し伸べず、無性愛に関する文献資料も提供していない。活動家のサラ・ベス・ブルックスは、無性愛者であることをカミングアウトするにあたって、「無性愛者は性自認をはき違え、社会正義の運動の中で不相応な注目を浴びている」と多くのLGBTの人々から言われている。他方では「The Trevor Project」や「The National LGBTQ Task Force」のように、異性愛ではない以上クィアの定義に含まれるという理由から、はっきりと無性愛を受容しているLGBT組織もある。今ではLGBTQという略語の中にAを付け加えている組織もあれば、いまだ議論の俎上にある組織も存在する。 いくつかの司法制度の下では、無性愛は法的保護を受けている。ブラジルは1999年から、国の倫理規定に基づいて、精神科医によるあらゆる性的指向の病理化や治療の試みを禁じており、またアメリカのニューヨーク州では無性愛者を保護すべき人々として扱っている。しかし、無性愛は大衆や研究者の目をさほど引き付けていないため、他の性的指向ほどには法制化の対象にはなっていない。
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