山椒魚
『山椒魚』(井伏鱒二) 山椒魚は岩屋にまる2年いるうちに、体が発育して、外へ出られなくなった。ある日、蛙が紛れ込んで来たので、山椒魚は自分の頭で出口をふさぎ、蛙を閉じ込めてしまう。山椒魚と蛙は「お前はばかだ」と罵り合い、やがて黙り込む。2年がたつ。空腹で動けなくなった蛙は、「今でも別にお前のことを怒ってはいないんだ」と、山椒魚に言う。
★2.山椒魚を買いに行く。
『黄村(おうそん)先生言行録』(太宰治) 黄村先生は山椒魚に興味を持ち、いろいろな書物を読んで調べる。『作陽誌』によれば、昔、作州(岡山県)に3丈(約9メートル)もある大きなハンザキ(山椒魚)がおり、人間をとって食べたという。『古事記』のヤマタノヲロチや、白兎の皮を剥いだワニは、実は山椒魚ではなかったか、と黄村先生は考える。「見世物小屋に、身のたけ1丈の山椒魚が出ている」と聞き、黄村先生は2百円の大金を用意して買いに出かける。しかし実際は3尺5寸(約1メートル)の大きさだったので、黄村先生は落胆した。
*黄村先生を主人公とする作品は、他に→〔歯〕9の『花吹雪』、→〔茶〕1の『不審庵』がある。
『山椒魚』(松本清張『彩色江戸切絵図』) 天明年間(1781~89)、江戸に疱瘡が流行して、大勢の子供が死んだ。神主のように烏帽子をかぶった男が、「疱瘡除けの神霊仙魚」と書いた指物(さしもの)を背中につけ、「浅間(せんげん)様のお使い、箱根の深山幽谷に千年も棲む仙魚です。一目見るだけで疱瘡神は退散」と触れ、桶に入れた大山椒魚を、拝観料百文で見せてまわった。江戸の市民たちは迷信に弱く、男は荒稼ぎをした〔*男は乱暴者で、男に殴られたことを恨む子分が、大山椒魚を殺し、肉を串焼きにして男に食わせた〕。
★4.水界の生物である山椒魚が、陸地を切り崩して人類を圧迫する。
『山椒魚戦争』(チャペック) スマトラ近くの赤道上の小島に、2本足で歩く多数の山椒魚が発見された。彼らは人間と意志の疎通ができそうだったので、ヨーロッパ人たちは「山椒魚を繁殖させ、労働力にしよう」と考える。山椒魚は言語を覚え、独自の文明を作り上げてゆく。山椒魚に食料や武器を供給して、利益を得る国家や団体もある。山椒魚は盛んな繁殖活動によって、世界人口(20億)の10倍以上に増える。山椒魚たちは諸大陸の沿岸部に巨大地震を発生させ、陸地を切り崩して湾や島を作る。彼らの棲息のためには、多くの水や洲や海岸が必要なのだ。人間たちは、しだいに内陸部に追いつめられてゆく。
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