少年犯罪の低年齢化・凶悪化という誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 20:57 UTC 版)
「少年法」の記事における「少年犯罪の低年齢化・凶悪化という誤解」の解説
「現代の少年はキレやすく、ちょっとしたことに我慢ができず、重大事件を起こす」などとして、少年犯罪の増加・凶悪化がマスコミ等において主張され、少年法改正につながったことがある。 しかし、近年の犯罪件数はピークの1950年代半ば頃(強姦や殺人の凶悪犯罪)や1980年代半ば(刑法犯全体)と比べ非常に少なく、年毎に見ても減少の一途にある。刑法犯人数や再犯検挙人数も同様である。 2021年の少年法改正に関する法務省のQ&Aにおいても、少年犯罪は減少しており、少年による凶悪犯罪(原則逆送対象事件)も減少していると回答されている(Q2)。 すなわち、少年犯罪は、凶悪犯の検挙率を見る限り決して増加してはおらず、むしろ減少しているといえ、また統計上少年犯罪は凶悪化していないという結論が導き出される。 それにも関わらず、少年犯罪の増加・凶悪化というイメージが流布してしまうのは、センセーショナルな報道から特徴を恣意的に抽出して、扱いやすい物語を創造しているためであると考えられる。 また、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}少年法が改正されていないとする意見もある[誰によって?]が、上述の通り凶悪犯罪の発生を受けて2000年以降4度の改正が行われているため、改正「されていない」という意見は事実誤認である。改正により、現行法でも14歳以上の少年は重罪を犯した場合は刑事責任に問われ得るほか、上記の通り18歳および19歳は未成年でも死刑判決が下され得る。 更なる強硬論として廃止を望む声があるが、こうした意見は「少年法は甘い手続である」という誤解に基づくものであると思われ、また、新聞に載るような凶悪事件以外の大多数の少年非行に対する有効性が周知されていないことに基づく誤解である可能性が指摘されている。 また、少年法を廃止すると虞犯少年(犯罪を起こしていないがその恐れがある少年)を補導することができなくなってしまう。未だ法を犯していない状態では、成人はなんら法律上行動に制約を受けることがないから、虞犯少年の制度は少年に対してはむしろ厳しい制度といえる。触法少年(犯罪を起こした14歳未満の少年)や犯罪少年(犯罪を起こした14歳以上の少年)についても、軽微な犯罪を起こした場合、成人であれば不起訴になり何らの更生に向けた支援も得られないおそれがあるが、少年であれば、少年法により少年院や児童自立支援施設で更生教育を受ける機会が与えられ得る点はメリットであるといえる。 いずれにしても国民一般の認知度が低く理解が進んでいない法律であるため、メリット・デメリットをよく踏まえた上で意見を述べることが肝要である。 そして、少年法が重要な社会政策であることに鑑みれば、「どのような社会を作りたいか」という根本から考えることが重要であり、懲罰感情のままに相手を罰するのではなく、そもそも「被害者を生まないようにするためにはどうしたらいいか」という観点で議論を進めることが重要である。
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