小規模兵力とハイテク兵器の投入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 14:01 UTC 版)
「イラク戦争」の記事における「小規模兵力とハイテク兵器の投入」の解説
投入された兵力は1991年の湾岸戦争が66万人であるのに比較して、26万3千(アメリカ陸軍とアメリカ海兵隊で約10万、イギリス軍3万。海空軍、ロジスティク、インテリジェンスなどをふくめるとアメリカ軍約21万4千、イギリス軍4万5千、豪2千、ポーランド2.4千)と非常に少ない。GPS誘導爆弾やレーザー誘導爆弾など高性能の武器を効果的に用いることで特定の拠点を効率的に破壊するドクトリンとした。 これは、湾岸戦争後にコリン・パウエルによって提唱された「パウエル・ドクトリン」と呼ばれる戦争のスタイル(圧倒的な兵力を投入し、短期間での勝利を目指すもの)と対照的である。各国の軍事専門家の間でもイラク戦争における米軍の戦術がどの程度功を奏するかについては注目され、あるいは心配されていた。 この計画を積極的に提唱したのはラムズフェルド国防長官だと言われている。同長官はかねてより、パウエル・ドクトリンはベトナム戦争からの教訓として形成された「ワインバーガー・ドクトリン」の亜流であり、時代遅れになりつつある、との見解も表明している。 実際にイラク戦争では、開戦劈頭における航空機のピンポイント爆撃をはじめとする空爆と巡航ミサイルによる結節点の破壊によって、イラク軍の指揮系統は早期に崩壊した。組織的抵抗力を開戦直後にほぼ喪失したイラク軍は、各地で散発的に抵抗するしかなくなり、アメリカ軍は完全に戦争の主導権を握った。事前の大方の予想を裏切り、アメリカの陸上部隊も迅速にバグダードまで進軍することに成功した。このことはアメリカの圧倒的軍事力を(一時的なイメージだけであれ)世界中に見せつける結果となった。軍事大国アメリカの存在感をいっそう高めて、中東を始め世界各国に改めて示すことができたわけだ。開戦前から戦争が泥沼化すると予想していた研究者もいたが、この初期の圧勝によって彼らの主張は全く受け入れられなくなった。 この戦争ではスティンガーで武装させたMQ-1がイラク軍のMiG-25と交戦して互いに対空兵器を装備した有人機と無人攻撃機の史上初の空中戦も行われ、続く占領下の武装勢力との抗争では遠隔操作の無人自走機関銃を初めて実戦投入され、戦場のロボット化が進む。 この軍事的成功はC4ISR化(指揮・統制・監視・偵察のIT化とコンピュータ化)をいっそう促し、RMA(軍事革命)という考え方が台頭する。イラク軍に69式戦車など武器を大量に供給していた中国もイラク軍の一方的な敗北に衝撃を受けて中国人民解放軍は特にC4ISRと無人航空機(ドローン)の活用などに注目していたとされる。
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