対戦車戦闘用途
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 04:53 UTC 版)
手榴弾は、戦車や装甲車の装甲を破砕・貫通するほどの威力を持たないため、開いたハッチなどから車内に放り込む、主砲の砲口から挿入・炸裂させて主砲を使用不能にさせる、あるいは走行装置などの弱点攻撃に使用される。 第二次世界大戦では、炸薬量を増やした対戦車手榴弾、あるいは通常の柄付手榴弾である42型手榴弾やRGD-33などを7本程度束ねることで威力を増した集束手榴弾が対戦車戦に使用された。これらは、使用者に身の危険があるほど爆発力が強かったが、戦車の装甲に対して充分な威力を持っているとはなお言えず、エンジングリル上部や履帯・転輪などの弱点を狙わないと有効な損害を与えるのは難しかった。 機甲戦力と対峙した国々では、より効果的な対戦車手榴弾として、モンロー/ノイマン効果を利用して装甲を貫く成形炸薬を採用した手榴弾が登場した。しかし、成形炸薬は装甲板に対して正しい向きで起爆させる必要があり、吸着地雷のように手で正しい向きに固定しない限り威力発揮が難しかった。そこで、成形炸薬式の対戦車手榴弾は、空気抵抗を利用し、狙い通りの方向と角度で落着させる工夫がなされた。例えば、ソ連のRPG-6やRPG-43は、布製のリボンを弾体から展開し、このリボンを後方に曳いて飛ぶことで弾体の向きを安定させた。日本軍の三式対戦車手榴弾は麻紐の束をつけることで後方に多くの空気抵抗をもたせ、弾体に安定性を持たせようとしていた。中でも、ドイツ軍のパンツァーヴルフミーネは、弾体の形状そのものを工夫して後部に空気抵抗を持たせる凝ったものだった。 上記の成形炸薬式の対戦車手榴弾は投擲方法に習熟が必要な上に、結局は人力で投擲する手榴弾のため、小型で威力が低く、届く範囲も限定的なことから効果的な対戦車兵器では無かった。このため、より効果的な投射手段である対戦車ロケットランチャー(バズーカ、パンツァーシュレック)や、携帯式無反動砲(パンツァーファウスト)が登場すると、対戦車手榴弾はほとんど顧みられなくなった。 軍用としては過去のものになり、現代ではほとんど使われていない対戦車手榴弾だが、隠し持つのが容易という利点がある。特に近年の非対称戦争では武装勢力の奇襲攻撃に使用されるケースがある(パラシュートで成形炸薬の向きに着弾を整えるRKG-3など)。
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