家事調停の開始 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
「家事調停」の記事における「家事調停の開始 (日本)」の解説
日本の家事調停は、当事者が自ら家事調停を申し立てることによって手続が始まることが多く、当事者が人事訴訟又は家事審判を申し立てた後に家庭裁判所の判断で手続が始まること(付調停)は少ない。この点は、韓国の家事調停の大多数が、受訴裁判所の調停回付によって手続が始まること(後述)と対照的である。 家事調停の対象となる事件の範囲は、「人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)」である(家事事件手続法244条)。「家庭に関する事件」とは、当事者は親族又はこれに準じる一定の身分関係が存在する者の間に存在する、人間関係調整の余地のある紛争であると定義する学説が多い。 しかし、家庭裁判所はこの文言を厳格に解釈していない。例えば、家事調停には『司法統計』で「親族間の紛争の調整」と「その他」に分類される事件類型が全体の5%程度ある。これらの事件類型は、調停が成立せず、調停に代わる審判もされない事件の割合が高い。このことは、家庭裁判所が「扱いに困る」事件もそれなりに受け付けて、調停手続を始めていることを示唆する。 「家庭に関する事件」として重要なのは、家事事件手続法別表第二に掲げる事項(婚姻費用の分担、養育費、遺産の分割、子との面会交流など)に関する紛争である。これらの事項は、当事者間の話し合いになじむと考えられる事項であり、後述のとおり他の法域でも家事調停の対象とされることが多い。これらの事項についての調停は、別二調停(べつにちょうてい)とも呼ばれる。古い日本語文献の「乙類調停」は、別二調停とほとんど同義である。 これに加えて、人事訴訟の対象となる離婚、離縁、嫡出否認、認知、親子関係不存在確認などの事項も家事調停の対象とするのが、家事事件手続法の特徴である。もっとも、人事訴訟の対象となる事項については、離婚及び離縁を除き、当事者間に結論及びその結論に至る事実関係の重要部分で認識が一致したときに、調停を成立させる代わりに、裁判所が事実関係の裏付けをとった上で合意に相当する審判をすることになっている(家事事件手続法277条)。これは、他の法域における合意命令( consent order )に対応する制度である。このような特徴があるので、離婚及び離縁を除く人事訴訟の対象となる事項についての調停は、特殊調停(とくしゅちょうてい)と呼ばれる。 離婚及び離縁を目的とする家事調停及びその他の家庭に関する事件を対象とする家事調停を併せて、一般調停(いっぱんちょうてい)と呼ぶ。 家事事件手続法別表第一は、家庭裁判所が当事者の意向に拘束されないで公益を守れるような判断をすべきと考えられる事項(成年後見等に関する事項、未成年後見等に関する事項、親権の停止・喪失に関する事項、相続放棄など)を掲げている。そのため、同法は、このような事項は関係者間の話し合いになじまないとみなして、家事調停の対象から外している。 家事調停の対象となる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない(同法256条1項、調停前置主義)。原告が家事調停を申し立てることなく訴えを提起したときは、裁判所は職権で事件を家事調停に付する(付調停。韓国で言う「調停回付」)のが原則である(同条2項)。
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