家事調停の技法(総論)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
家事調停の技法は、様々な観点から分類されている。 調停機関が合意内容を積極的に誘導することを許容するか否かという観点により、調停は斡旋と合意支援とに分けることができる。上述のとおり、旧来の家事調停はほとんどが斡旋であり、家事調停に合意支援という概念が持ち込まれたのは20世紀後半以降のことである。日本や韓国の家事調停は斡旋の色彩が濃いのに対して、アメリカやその影響を受けて家事調停を導入した法域では合意支援が広く行われている。日本や韓国の家事調停は、制度上は斡旋であるが、その本質ないしは理念型を巡って「調停裁判説」と「調停合意説」との対立があると言われる。つまり、調停裁判説は「調停の本質は調停人の裁定(裁判)とこれに基づく説得(斡旋)である」と主張する説であり、調停合意説は「調停の本質は合意支援である」と主張する説である、と整理されている。 もっとも、斡旋と合意支援とは相容れないものではなく、同じ調停人が斡旋も合意支援も行うことがあるし、司法機関が自ら調停機関となるときは、「合意支援」と称していても、斡旋の色彩が混じった調停を行うことが多い。斡旋と合意支援との区別は絶対的なものではなく、両者は連続的である。合意支援であっても、手続や合意内容についての制約を加えていくと、実態は斡旋に近づいていく。 当事者の調停期日 mediation session への参加形態は、一期日に全当事者が参加する同期型調停 synchronous mediation と各当事者が参加する期日を複数に振り分ける(当事者双方がそれぞれ一期日おきに参加するなど)非同期型調停 asynchronous mediation' とに分けることができ、同期型調停は、同席調停 joint session mediation と別席調停 separate session mediation, caucus-style mediation, shuttle mediation とに分けることができる。同席調停とは、調停人及び当事者全員が対面して協議を行うことを原則とする調停である。別席調停とは、当事者各自が個別に調停人と対面し、調停人を介して協議を行うことを原則とする調停である(当然、非同期型調停は別席調停である。以下、特に明示しない限り、「調停期日」とは同期型調停における調停期日をいう。)。通信調停 online mediation とは、当事者の全部又は一部が通信回線を介して調停人と対面して協議を行う調停であり、同席調停に近い期日運用も別席調停に近い期日運用もあり得る。 1件の調停の全部の期日が同席で統一されるとは限らないし、別席で統一されるとも限らない。もっとも、合意支援は同席調停の効用(当事者の相互理解を促進すること、当事者の問題解決に向けた協力意欲を促進すること、手続の透明性を確保することなどが挙げられる。)を発揮させることを目的とする技法であることを理由として、合意支援は同席で行うのが原則であると説く調停人は多い。しかし、調停人にとっては、別席調停の方が調停手続の主導権を握りやすい。そのため、合意支援の発祥の地であるアメリカでも、別席調停を頻用する調停人は少なくない。合意支援が技法として確立する前にも、例えば昭和20年代(1950年前後)の日本で同席による家事調停が行われたことがあったが、間もなく別席調停が支配的になったようである。そのことに危機感を抱いて同席調停の効用を再評価するよう呼びかける論者は多い。
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