家事調停の効力 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
「家事調停」の記事における「家事調停の効力 (日本)」の解説
家事事件手続法別表第二に掲げる事項についての調停調書の記載は確定審判(同法39条)と同一の効力を有するので(同法268条1項)、金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付が記載された調停調書の正本は、執行力のある債務名義の正本(民事執行法51条、25条本文)と同一の効力を有する(家事事件手続法75条)。つまり、権利者は、このような調停調書の正本に基づいて、執行文の付与を受けずに強制執行の開始を申し立てることができる。それ以外の事項についての調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有するので(同法268条1項。ただし、家事調停に既判力があるか否かについては、学説に争いがある。)、執行文の付与を受ければ強制執行をすることができる(民事執行法22条7号、25条本文)。 扶養義務に関して成立した家事調停は、強制執行の際に通常の債務名義よりも優遇される(後述)。面会交流を定める調停条項も、間接強制による強制執行が認められることがある。 家事事件手続法は、強制執行以外にも、調停内容の履行支援策を用意している。調停により定められた義務の権利者は、家庭裁判所に申し出て、義務者に対して義務の履行を勧告してもらうことができる(同法289条1項、7項)。この制度を履行勧告と言う。また、家庭裁判所は、調停により定められた義務を履行しない義務者に対して、期限を定めて義務の履行を命じ、それでも義務者が義務を履行しないときは10万円以下の過料に処することができる(同法290条)。この制度を履行命令と言う。 しかし、強制執行、履行勧告及び履行命令のいずれも、義務者の行方や財産、勤務先を権利者が発見できて初めて実効性を持つ。日本では、公的機関が義務者に関する情報収集に協力したり、義務者の支払義務を立て替えたりするような強力な履行確保策はまだ実現していない。
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