定まらない評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 03:00 UTC 版)
このように、確かな伝記が伝わらず、真偽定かでない伝承が多く作られた老子の生涯は、現在でも定まったものは無く、多くの論説が試されて来た。老子の存在に疑問を呈した初期の思想家は、北魏の宰相・崔浩(381年 - 450年)だった。唐の韓愈(768年 - 824年)は、孔子が老子から教えを受けたという説を否定した。その後の宋代には陳師道、葉適、黄震らが老子の伝記を検証し、清代の汪中(『老子道徳経異序』『述学、補遺、老子考異』)と崔述(『崔東壁遺書・洙泗考信録』)は『史記』第三の説にある「太史捶」が老子を正しく伝え、孔子の後の人物だと主張した。 20世紀中ごろに至っても研究者による見解はまちまちのまま、その論調はいくつかのグループに分かれていた。大きくは、古代中国の文献類に信頼を置き老子像を捉える「信古」と、逆に批判的な「疑古」とに分類できる。老子の時代についてはさらに分かれ、胡適(『中国哲学史』、1926年)、唐蘭(『老聃的生命和時代考』)、郭沫若(『老聃・関尹・環淵』)、黄方剛(『老子年代之考察』)、馬叙倫(中国語版)(『辨「老子」非戦国後期之作品』他)、高亨(中国語版)(『重訂老子正詁』、1957年)、詹剣峰(『老子其人書及其道論』、1982年)、陳鼓応(中国語版)(『老子注釈与評介』、1984年)らは孔子とほぼ同時代の春秋末期とする「早期説」と唱え、梁啓超(1873年 - 1929年、「評論胡適之中国哲学史大綱」『飲冰室合集』)、銭穆(『関干老子成書年代之一種考察』)、羅根澤(中国語版)(『老子及老子書的問題』)、譚戒甫(中国語版)(『二老研究』)などは戦国末期と考える「晩期説」を主張した。老子の存在を否定する派では、孫次舟(『再評「古史辨」』)は老子を荘子学派が創作した架空の人物と主張し、1957年に刊行された杜国庠(中国語版)の『先秦諸子思想概要』では、中国思想の論理学派(孔子・荘子・墨子・荀子・韓非子など)を説明する中で老子に触れた項が無いだけでなく、一切老子に触れず道家の祖を荘子としている。
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