妖精画
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/01 04:33 UTC 版)
「ジョン・シモンズ (画家)」の記事における「妖精画」の解説
典型的な妖精画(英語版)は、ヴィクトリア朝の文化とともに、ロマン主義文学の影響力にも強く根を張っている。こうした影響の中でも最も顕著なものは、シェイクスピアの『夏の夜の夢』や『テンペスト』といった主題である。このほかにも、エドマンド・スペンサーの『妖精の女王』や、アレキサンダー・ポープの『髪盗人』などが、影響を与えたものとして言及される。 シモンズは、女性の妖精を、しばしば裸体で描く、専門家として知られていた。ボナムス(英語版)のオークションにおける解説によれば、彼の1873年のある作品は「夏の夜の夢」の場面を描いたものであり、この主題の作品としては「最も優れた、最も大胆な作例」であるという。妖精画への関心は、19世紀にリバイバルし、鑑賞者は絵画に描かれた想像の世界をみて、しばし現実を忘れ、ヴィクトリア朝の日常生活の厳格さから逃れることができた。シモンズの作品の大部分は、簡素で、通常はひとりかふたりを中心人物として描き、回りの枠組は木の葉によって象られている。ティターニア(『夏の夜の夢』に登場する妖精の女王)は、主題としてしばしば取り上げられており、デリケートな形で衣をまとった様々なポーズで描かれている。ボナムスによれば、シモンズは「妖精の女王をヴィクトリア朝的な女性美の標準として」描いているといい、さらに「うねるように配された花々やコンボルブルス(英語版)(セイヨウヒルガオ)が装飾的なモチーフとされ、シモンズはロマンティックに中央の人物たちに枠付けをして、物語が演じられる舞台を作り出しているのである。現実と夢幻の境界を嘲笑いながら、彼はシェイクスピア劇の詩的な解釈を生み出しているのだ」としている。 シモンズによるティターニアの描写の一部は、妖精の女王に、より大きな性的魅力を帯びさせることになった。 ヴィクトリア朝美術の専門家であるクリストファー・ウッド (Christopher Wood) によると、シモンズの技法は、極めて細部に至る描写を活用したジョゼフ・ノエル・ペイトンの影響を示しているという。ウッドはまた、シモンズのスタイルに影響を与えたものとして、さらにウィリアム・エドワード・フロスト(英語版)とウィリアム・エッティの名を挙げている。シモンズの妖精画は、巧みな光の使い方と動植物の写実的な細部描写によって、超現実的な効果を生んでいる。ウッドは、シモンズの「コンボルブルスの中の妖精 (A Fairy among Convulvulus)」を、「シモンズの典型的なピンナップ (a typical Simmons pin-up)」 だと述べ、こうした絵画が「明確な(性的)くすぐり (distinctly titillating)」であるという仮説を提示している。このほかの、シモンズによる妖精画には、同じくシェイクスピアの『夏の夜の夢』による「ハーミアと妖精たち (Hermia and the Fairies)」(1861年完成)、「マルハナバチから盗むミツバチ (The Honey Bee Steals from the Bumble Bees)」、「宵の明星 (The Evening Star)」などがある。
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