大衆捷運法による位置付け
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1968年に建設議論が起き、1988年12月15日に建設に着手した台北市による捷運運営の成功経験の影響で、他の自治体でも建設の機運が高まり、90年代初頭は当時の台湾政府も軌道交通について楽観的予測をしていたため、台北市・高雄市の両直轄市以外の、台中・桃園・新竹・嘉義・台南などの省轄市や県でも通勤ラッシュの緩和や同時期に計画された台湾高速鉄道の各駅と都心との連絡手段として次々と計画が持ち上がった。しかし2000年代になると、中央政府・地方政府ともに急速な財政悪化で大規模な計画を遂行できなくなった。また既に建設に着手していた高雄捷運でも開業後の運営が不透明になり、中央政府は路線新設に保守的な姿勢をみせ、各都市政府の計画審査を厳格化したため、多数の路線建設計画は白紙化同然となった。 このため、交通部は地方政府の要求に対し、需要予測と開業後の持続可能な経営を求めるべく2011年4月11日付けで捷運法に「大衆捷運系統建設および周辺土地開発計画申請と審査作業のガイドライン」を追記し、元の2段階審査から3段階審査に改めた。各段階での審査内容も、工期・予算執行・施行各段階に加え、予算の分担率や資金調達方法、沿線開発をセットするTOD(公共交通指向型開発)制度や開業後の税収増を担保に起債するTIF(en:Tax Increment Financing)制度の導入を提案し、費用対効果を上げ、また地方負担分を高めることにした。以下のようにすべての段階で地方の草案に対し中央政府の多重チェックを機能させ、乱発を防ぐ狙いである。 趣旨 路線計画と都市開発を並行させ、整合性を高める 費用対効果の見通しを併記させ、そぐわないものは廃案または修正 自治体および事業者の自己財源負担比率を明確化させ、必要であれば金融機関からの調達 一定の資金調達ができなければ計画を推進させない。 改訂前 「フィジビリティスタディ(以下F/S)」:中央政府確定は必須ではない 「総合計画」審査:環境アセスメントのみ 駅周辺の土地開発は市場に委ねる 議会同意:必須ではない 都市計画:その時点で有効な都市計画を修正・変更のみ 改訂後 「F/S」:地方政府が策定したものを交通部→国家発展委員会(国発会)の2段階審査、確定→行政院による確定(閣議決定) 「総合計画審査」:地方政府が策定→交通部と国発会の2段階審査、確定→地方政府が都市計画案修正→環保署による環境アセスメント→行政院確定 「着工前作業審査」:財務・基金設立計画作成→都市計画変更を内政部が確定→交通部が審査 費用対効果明確化が前提 建設と同時に周辺土地開発も進行 TIF制度適用可 都市計画:交通部から総合計画案審査を行政院に引き継ぐ前に、土地用途などの変更手続を伴う都市計画変更案を地方政府に一旦差し戻し委員会で再審議させる 議会:建設計画および資金調達案は議会同意必須 これにより、中央政府各省庁および地方政府各部署の責任を明確化し、それぞれの協力を促すことで計画を推進させることになった。桃園機場捷運は当初国家プロジェクトとして推進されたため、交通部傘下の高鉄局が建設主体となったが、開業後の運営は桃園市政府などが母体の桃園捷運公司となっている。 また台中捷運緑線では建設段階では経験豊富な台北市政府捷運工程局が担当し、運営は今後設立予定の台中捷運公司が、新北市で建設中の淡海ライトレールでは建設主管は新北市政府捷運工程局であるが、運営は3年間高雄捷運公司が行うなど、計画・建設・運営段階でそれぞれ事業者が異なるケースがある。
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