国家プロジェクトとは? わかりやすく解説

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国家プロジェクト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/27 13:41 UTC 版)

国家プロジェクト(こっかプロジェクト)は、政治主導・行政主導により、新興分野・新規事業に投資(非経済的分野にも)される活動の俗称である。

日本では一般的には、国会の予算承認を得た大型プロジェクトに対し使われる呼称である。

概要

国家の繁栄、利潤確保を目的とし、民間では成し得にくい事業を主に取り扱う。事業内容は、インフラ整備、土木建築、宇宙開発、先端研究等多岐にわたる。 先端研究分野やインフラ整備へ先進的投資を行うことで国家経済に多くの利益をもたらす反面、多くの税金を投入してしまい、時に多大な損失を被る危険性もある。

日本で国家プロジェクトにあたる根拠法として、日本国憲法第八十五条財政法第四条の二および第四条の三が考えられている。
時代や文脈により、国家の主体性が政府全体、内閣、特定の指導者に帰属する場合がある。
本ページでは、インフラ整備からイベントや経済政策、過去や海外の事例までを広義に扱う。

日本の主要な国家プロジェクトと考えられているもの

政治

軍事

教育

公共事業

イベント

その他

進行中のもの

医療福祉分野

  • 超早期高精度診断機器
  • 微小がん治療機器
  • 幹細胞技術
  • 生活支援ロボット

文科省

  • 宇宙航空研究開発推進
  • 環境問題向け地球観測衛星開発
  • 原子力高速増殖炉サイクル
  • 国際熱核融合実験炉
  • 国際原子力人材育成
  • 小型ロケット、超小型衛星技術開発
  • 準天頂衛星システム「みちびき」
  • 国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」、同補給機HTV
  • JAXA「はやぶさ」後継開発
  • X線天文衛星
  • 国産高性能旅客機研究開発

過去のもの

当初国家主導で進められ、その後民間実用化や社会実装支援へと役割が移行したプロジェクトも、国家プロジェクトの一環として扱われることがある。

  • YS-11(1962-1973年) - 日本初の国産旅客機開発として通産省主導で進められたが、民間(日本航空機製造)に移管後、商業的には成功せず生産終了
  • 新幹線網の整備(1964年以降) - 国鉄主導で始まったが、民営化(JR化)後に運営が民間に移行し、国家プロジェクトとしての役割を終えた。
  • 次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト(「」「富岳」) - 文部科学省が主導し、理化学研究所富士通が開発したスーパーコンピュータ「京」(2012年稼働開始)および「富岳」(2021年稼働開始)を指す国家プロジェクト。「京」は毎秒10ペタフロップス超の性能で当時世界最速を記録し、2019年に運用終了。「富岳」は442ペタフロップスの性能を誇り、気候シミュレーションやAI研究に活用されている。開発は終了したが、「富岳」は現在も稼働中で、ポスト富岳の検討が進行中。技術の一部は民間企業による商用化に移行しつつある。
  • 情報大航海プロジェクト(2007年度-2009年度) - 経済産業省2007年平成19年)に立ち上げた日本の国産検索エンジン開発プロジェクト。長谷山美紀(北海道大学副学長、博士(工学))がチーフ技術アドバイザーを務めた。GoogleやYahoo!に依存しない検索技術の確立を目指し産学官56団体が参加。3年間の取り組みで約150億円の予算を投じたが、技術的な課題や市場の変化により失敗し、撤退に至った。このプロジェクトは、国家主導の技術開発の難しさを象徴する事例としても知られる[9]
  • 自動運転技術(2014-2022年) - 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、「自動運転システム」が第1期(2014-2018年)および第2期(2018-2022年)の重点課題として設定され、交通安全やモビリティ革新を目指した国家プロジェクトとして推進された。産学官連携で高精度3Dマップや実証実験が進められ、2020年東京オリンピックでの活用も視野に入れられた。しかし、第3期(2023年以降)では、民間企業による実用化が進展したことや国家の優先課題の変化に伴い、重点課題から除外され、政府の役割は開発支援から社会実装支援へとシフトした[注釈 2]。例えば、ダイナミックマッププラットフォーム社(DMP社)が高精度地図を提供し、日産自動車の「ProPILOT 2.0」に採用されたほか、トヨタ自動車が「e-Palette」や「Advanced Drive」で商用化を進め、海外ではWaymoが自動運転タクシーを展開するなど、民間主導の実用化が加速している。

内閣主導

脚注

注釈

  1. ^ 採択テーマ名「軽量フレキシブルペロブスカイト太陽電池の量産実証
    3.事業内容
    【1】事業名
    グリーンイノベーション基金事業/次世代型太陽電池の開発/次世代型太陽電池実証事業
    【2】予算
    378億円(NEDO支援規模)
    【3】期間
    2024年度~2030年度(7年間)
  2. ^ 開発支援から社会実装支援へとシフト

出典

  1. ^ 目標1 研究開発プロジェクト(2022年度採択)|細胞内サイバネティック・アバターの遠隔制御によって見守られる社会の実現”. JST. 2025年5月20日閲覧。
  2. ^ 目標3-1 一人に一台一生寄り添うスマートロボット|[3]スマートロボットの福祉・医療への展開技術の構築”. JST. 2025年5月20日閲覧。
  3. ^ JST ムーンショット型研究開発事業|プログラム紹介|目標6”. JSTウェブサイト. 2025年3月28日閲覧。
  4. ^ Editor, CSRC Content. “cyber-physical system(s) - Glossary | CSRC” (英語). csrc.nist.gov. 2025年4月11日閲覧。
  5. ^ Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府”. 内閣府ホームページ. 2025年4月11日閲覧。
  6. ^ 総務省|令和2年版 情報通信白書|データ主導型の「超スマート社会」への移行”. www.soumu.go.jp. 2025年4月11日閲覧。
  7. ^ グリーンイノベーション基金事業”. NEDO. 2025年5月25日閲覧。
  8. ^ グリーンイノベーション基金事業で新たに「次世代型太陽電池実証事業」に着手しました”. NEDO (2024年9月20日). 2025年5月25日閲覧。
  9. ^ 国産検索エンジン開発が頓挫した先にあるもの”. ITmedia (2013年2月1日). 2025年5月13日閲覧。
  10. ^ 新成長戦略 [平成22年6月18日閣議決定]”. 首相官邸. 2010年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月2日閲覧。
  11. ^ 日本再興戦略” (PDF). 農林水産省 (2013年6月14日). 2016年7月31日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


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