大脳半球の左右差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 23:18 UTC 版)
詳細は「脳機能局在論」を参照 ヒト特有の大脳半球の左右の機能についての学説は、古い時代のてんかん患者の治療のために行った、脳梁の切除や、手術中に脳に電気刺激などをほどこし患者に質問を行った場合の観察記録から推測された仮説が多い。それらの少ない観察例から拡大解釈されたもの、その拡大解釈をさらに拡大解釈し、歪曲された俗説が非常に多いので注意が必要である。 しかしながら、脳専門医の中には、左右の脳半球に機能分布の違いを認める医師もいる。病巣や事故によって損なわれた脳の部位と、外から観察できる機能欠損の関連性に経験則があてはまるからである。また、非常に希なケースを除いて、言語野が大脳左半球に有るのは確かである。一方で、論理的思考について重要な機能が左半球にあるのは確かだが、右大脳の前頭野の欠損によって「順序立った行動」が不可能になった例が、カナダのワイルダー・ペンフィールド医師の姉の報告例などに見られる。 他に確認の取れている事実として、まずヒトの大脳では左半球のほうが右半球より若干大きいことや、身体の右側の制御を左半球、左側の制御を右半球が行っていることなどは判明している。脳の左右の大きさの違いは医療機器で即座に確認でき、左右脳と身体の制御の関連性については、脳の欠損半球と、麻痺がおこる身体部位との関連から明らかだからである。 しかしながら、脳という器官の複雑性をかんがみた場合、ある能力について、どちらかの半球だけが機能しているといえるほど単純なものではなく、またそれを裏付けるデータもない。 大多数の研究者が特定の精神機能の中枢とみなしている領野は今のところ、末梢との神経接続が解剖的に調べられている初期知覚領野・運動野を除けば言語野しかない。さらに左脳と右脳がそれぞれ論理的思考・創造的思考を処理し、もう片方がそれを担当していないという明確な証拠や実験データはない。 2010年、脳の神経細胞を三次元的に培養した結果、神経突起の進む方向を決定する成長円錐にある糸状仮足が右回りで伸縮していることが玉田らの研究により明らかとなり、脳の左右の機能差に関連しているのではないかと注目されている。
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