執行準備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 16:55 UTC 版)
法務大臣が署名、押印して執行命令書が作成されると、刑事施設の長に届けられ、5日以内に死刑が執行される(刑事訴訟法476条)。法律(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律178条2項)の規定により、日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に定める休日、12月29日から1月3日までの間は原則死刑の執行は行われないが、かつては大晦日の12月31日に死刑が執行されることがあった。 また、1日にひとつの刑事施設で死刑が執行されるのは1人が基本であるが、2人ないし3人が時間をおいて執行された例も多数ある。また、共犯関係にある死刑囚の場合、同じ日に死刑を執行するという慣例がある(北九州市病院長殺害事件や夕張保険金殺人事件など)。また、後述の田中伊三次が同時に23人に執行命令を出した際は、全員の死刑執行に1ヶ月以上かかっており「5日以内に死刑」は刑事施設の準備により遅れる場合がある。 過去においては当該死刑確定者に前日または前々日に執行の予定を告げ、死刑確定者の希望する食事をできる限りの範囲で与え、特別の入浴や親族との面会を許可し、同囚や宗教教誨師や担当刑務官らを交え「お別れ会」を行うこともあった。「お別れ会」の開催は、当時の大阪拘置所所長玉井策郎が1956年に読売新聞の紙面で公開した秘密録音で明らかになった。 現在では死刑確定者には当日の朝に執行を告げられ、午前中に執行される傾向にある。1975年10月3日に福岡拘置所で死刑執行当日の朝に、前日死刑執行を通知されていた死刑囚が左手首を剃刀(カミソリ)で切り付け自殺する事件が発生したため、それ以降は死刑囚への執行を前日に通知しなくなったとされる。 また、執行を担当する刑務官についても執行当日に職務命令が通知されるという。これは刑務官に事前に知らせると、情報漏洩の危険があるためである。また当日に年次有給休暇を取られ、欠勤されてしまうからという話もあるが真偽不明である。担当する刑務官は通院中の者や新婚の者、妻が妊娠中である既婚の男性刑務官ならびに親族に加療中の患者がいる者、あるいは喪中・忌中にある者などは除外され、残りの者から選抜されるという。 死刑執行の日、死刑確定者の独房には死刑確定者の抵抗に備え、特別警備隊と呼ばれる、頑強な刑務官で構成された一隊が送られる。ここでは死刑執行について何も伝えられないが、通常の巡視とは異なる多数で来るため、この段階で死刑執行がわかるという。時間は特に法律で定めていないが、午前9時から11時の間が通常であるといわれている(旧刑法附則1条では「午前10時前」とされていた)。ここでは遺書を書く時間や、室や荷物を整理する時間は全く与えられず、即座に特別警備隊により刑場へ連行される。連行後、刑場の教誨室で、首席矯正処遇官(処遇担当)より死刑確定者にこれから死刑を執行する旨が伝えられる。
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