執行機関の統制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 06:11 UTC 版)
議院内閣制を採るたいていの加盟国とは異なって欧州連合では執行機関と立法機関との間で権力が分立しており、このような関係について言えば、欧州議会は加盟国の議会よりもアメリカ合衆国議会に似たものとなっている。これを示すものとして、次期欧州委員会委員長は直近の欧州議会議員選挙をもとに欧州理事会が候補を提案する。基本条約では、この提案に対して欧州議会が単純過半数でもって委員長を承認して「選出」することになっている。欧州議会が承認したことを受けて、次期欧州委員会委員長は各加盟国から提示された人物に基づき、次期欧州委員会の委員人事案を提出する。委員候補はそれぞれに割り当てられた担当職域ごとに欧州議会の各委員会の聴聞を受ける。その後、欧州議会は欧州委員会全体として承認の是非を採決する。これまでに欧州議会が次期委員長候補や次期委員会案を否決したということはないが、第1次バローゾ委員会の承認にあたっては否決されそうになった。このような欧州議会の圧力に対してバローゾは委員会人事案をいったん取り下げ、欧州議会に受け入れやすいような委員候補の一部変更を行なった。この一連の事態は欧州議会の機能が充実してきた証左であり、欧州議会は欧州委員会に対してただスタンプを押すのではなく、説明責任を求められるような能力を持ったことを示している。さらに次期委員会人事案の採決において、欧州議会の議員は出身国ではなく、それぞれが所属する政党の方針に従って意思を表明している。このように欧州議会の結束や影響力を行使しようとする動きに対して加盟国の首脳や欧州連合のほかの機関などは、欧州議会議員選挙の投票率が低迷しているにもかかわらず、より注視するようになっている。 また欧州議会は3分の2の多数によって欧州委員会を総辞職させることができる不信任決議を採択する権限を持つ。過去に不信任決議が採択されたことはないが、サンテール委員会に対して不信任決議が可決されそうになったということはあった。このほかにも欧州連合の活動に関する監督権限を有しており、たとえば欧州委員会に対して報告や議員の質問に対する回答を求めたり、欧州連合理事会議長国に対してその任期の冒頭において活動方針を示すよう求めたり、欧州委員会や理事会に対して法令や政策の案の作成を求めたり、ほかの機関に対して質問したりすることができる。目下、欧州議会の議員はあらゆる議題について質問することができるが、2008年7月に欧州議会は議題の分野を欧州連合の権能にかかわるものに限定し、攻撃的なものや個人的な質問を禁止することを採決した。
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