地球-月の定量的記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 06:20 UTC 版)
1969年から1972年に行われたアポロ計画や1973年のルノホート計画 により月面に置かれた鏡を利用して、レーザーパルスを反射させる月レーザー測距実験 (LLR) により、月の動きは数センチメートルの精度で追跡できるようになった。これはレーザーが月までの間を往復する時間から非常に正確に月までの距離を測定するものであり、運動方程式に適合する。 これにより、月の減速に関わる数値、すなわち角速度の減速と地球の月の楕円の半主軸の変化率の数値が得られた。1970年から2012年までの結果は: −25.82±0.03 arcsecond/century2 (黄道における経度) +38.08±0.04 mm/yr (平均の地球-月の距離) これは、地球を周回する人工衛星に同様の技術を適用した衛星レーザー測距 (SLR) の結果とも符合し、潮汐を含む地球の重力場モデルを提供する。このモデルは正確に月の動きの変化を予測する。 最後に、古代の日食の観測結果からもかなり正確に往時の月の位置を得られる。これらの観測結果に関する研究からも前述の値に符合する結果を得られる。 潮汐加速のもうひとつの結果は地球の自転を遅くすることである。様々な理由で地球の自転は(時間単位から世紀単位で)幾許か不安定であり、小さな潮汐効果は短期間で観測できないが、地球の自転に累積された変化は安定した時計を用いることで(暦表時, 原子時計)一日あたり数ミリ秒を測るには不足だが数世紀で容易に観測できる。現代の時刻で較正された安定した時計による測定よりも、(地球の自転の)遥か昔からの測定の積み重ねから(世界時)現代の1日の時間が長くなっている(暦表時)ことが判っている。これはΔTとして知られる。最近の値は国際地球回転・基準系事業 (IERS)による観測で得られる。過去数世紀における実際の日の長さも提供されている。 観測された月軌道の変化から、相応する1日の変化は以下の様に計算される。 +2.3 ms/century ただし、過去2700年にわたる歴史的な記録によれば、この値は以下の様になる。 +1.70 ± 0.05 ms/century 変化量は時間の2次式となり、T2(世紀単位で表した時間の二乗)の項の係数は以下のようになる。 ΔT = +31 s/century2 地球の潮汐減速とは反対の機構もあり、実際に地球の自転を加速している。地球は球というよりは回転楕円体で極に対して平たい。SLRではこの平たさが減少している事が示されている。それは、氷期には極に氷が堆積し岩を押し込み、1万年前に氷の質量が消え始めたが、地球の地殻はいまだ静水圧平衡に達しておらず今も戻りつつある(緩和時間は凡そ4000年と見積もられている)ゆえと説明される。この結果、極の半径は増加し、同時に赤道の半径は減少する(地球の体積は維持される)。これは、質量が地球の自転軸に寄り、地球の慣性モーメント質量が減る事を意味する。このプロセスのみは自転速度を増加させる(回転しているフィギュアスケータが腕を引き寄せると回転速度が上がる現象)。慣性モーメントの変化の観測結果から自転の加速が計算される。歴史的な期間において凡そ −0.6 ms/century である。これは歴史的な観測の大半を説明する。
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