地方の特色
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:33 UTC 版)
近世や現代の料理の特徴である郷土料理にあたるものは今日残る数少ない文献からははっきりしない。その代わり中世の料理には他民族との境界や、後の国境が各地方の標準的な食事を特徴付ける穀類や油に表れていた。土地による食物の違いはヨーロッパ各地の気候、政府、地域の習慣の違いによる所が大きかった。包括的な一般化は避けるべきだが、特定の食物が広まっていた地域はおおまかには分かっている。ブリテン諸島、フランス北部、ネーデルラント、ドイツ語圏、スカンジナビア、バルト海沿岸地域の気候はブドウやオリーブの栽培には寒すぎた。南部では貧富にかかわらずワインが一般的な飲物だった(ただし、庶民は二番絞りの安いワインを飲んでいた)。それに対して北部ではビールが一般的で、ワインは高価な輸入品だった。現代一般的な種類とは異なるが、柑橘類やザクロは地中海沿岸で一般的だった。干しイチジクやデーツは北部にももたらされたが、料理に使われることは稀だった。 オリーブオイルは地中海地方ではありふれた食材だったが、北部ではケシの実油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油が手頃な代用品となった。黒死病が流行した時の著しい致死率の後、バターとラードが北ヨーロッパと北西ヨーロッパ、特にネーデルラントで大量に使われた。ヨーロッパ中の中流階級以上の料理にはアーモンドが普及し、卵や動物の乳の代用になるなど用途の多いアーモンドミルクの形で使用された。但し苦いビター種が現れたのはもっと後になってからであった。
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