土地利用の管理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 04:45 UTC 版)
「防災まちづくり」および「事前復興」も参照 洪水や津波、土砂崩れや土石流のように土地要因が大きな脆弱性である災害では、例えば河川沿いの低地において住宅建設を禁じるなど、土地利用を適切に管理することができればその被害を大きく軽減することができる。しかし、現実としてそれは非常に困難である。人々が危険な土地を利用する背景には、生活や経済活動を行う上での利便性、人やモノが集まって集落や都市を形成するメリット、いざ移転するといっても安全な土地ほど地価が高いなどの事情があり、それら日常生活におけるメリットを、稀にしか起こらないような災害のために犠牲にする選択が困難だからである。 災害と土地利用に絡む主な問題と考えられる対処を挙げる。 利便性に基づいた地価の評価が、地価の安い危険な土地の利用を促進したり、土地代を抑えるための宅地の細分化(宅地面積の縮小)を招いて危険性の高い過密住宅地を生むという問題がある。これに対しては、危険性をコストに織り込む内部化の取り組み=地価の評価に危険性・安全性を組み入れるシステムや、法的に利用を規制する施策が有効である。例えばアメリカの全米洪水保険制度 (NFIP) は、地域毎の洪水リスクに応じて保険料率を設定し、危険な区域で開発禁止・制限や耐水害構造(ピロティなど)の義務付けを行った上で、地域の洪水対策の進展度に応じて保険料率を軽減することで、危険な土地の利用抑制と対策促進を行っている。 所有権に基づく土地の私有は個人の権利としては容認されるが、安全性を無視した土地利用を招き被害リスクを増大させる側面もある。これに対しては、都市計画における適切な規制が必要である。日本における防災集団移転促進事業やがけ地近接危険住宅移転事業には規制の性質はなく、あくまで個人の自発的な移転を促す助成を行う制度である。建築基準法における「災害危険区域」は各自治体の指定により建築制限を課すものであるが、住民との合意が難しく、伊勢湾台風後に指定を行った名古屋市のように、きっかけがなければ指定がなされにくい現状がある。このほかの制度としては土砂災害警戒区域、個別事例では横須賀市における活断層付近の公共建築物・大規模開発規制などがある。
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