合成での問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 05:13 UTC 版)
最初の物質として利用可能な核では必要な中性子の合計数にならないため、安定の島の核を作るのは非常に難しいことが分かっている。アクチニドターゲット(248Cmなど)と組み合わせた放射性イオンビーム(44Sなど)により安定の島の中心により近い中性子過剰な核の生成を可能になることがあるが、このようなビームはそのような実験をするのに必要な強度では使うことができない。250Cmや254Esのような重い同位体もターゲットとして使えるため、既知の同位体よりも中性子が1,2個多い同位体を作ることができるが、ターゲットを作るためにこれらの希少同位体を数ミリグラム作成することは難しい。また、最も中性子の多い既知の同位体、すなわちpxnやαxn (それぞれ陽子またはアルファ粒子の放出によりいくつかの中性子ができる)チャネルを占める同じ48Ca誘導融合蒸発反応における代わりの反応チャネルを調べることも可能と考えられる。これらにより元素111-117の中性子の多い同位体の合成ができる可能性がある。予測されている断面積はxnチャネルのものよりも小さい(1-900 fbのオーダー)が、それでもこれらの反応で他の方法では到達できない超重元素の同位体を生成することが可能であるかもしれない。これらの重い同位体のいくつかは比較的長い半減期のアルファ崩壊に加え電子捕獲を受け、安定の島の中心近くにあると予測される291Cnのような原子核に崩壊する。しかし依然としてベータ安定線近くの超重核の特性は未解明であるため、この話はほとんど仮説状態である。 アクチニド核(238Uや248Cm)の低エネルギー衝突での多核子移行反応において298Flのような安定の島の同位体を生成することも可能でありうる。もしZ = 114付近の殻効果が十分強い場合、ノーベリウムやシーボーギウムのような軽い元素は高い収率を持つと予測されているが、この逆準核分裂(生成物の質量平衡から離れるシフトを伴う部分融合と続いて起こる核分裂)のメカニズムにより、安定の島への方針が手に入る可能性がある。238U + 238Uおよび238U + 248Cmの予備調査はメンデレビウムより重い元素を生産するのに失敗した。ただし後者の反応における収率の増加は(入手可能であれば)254Esのようにさらに重いターゲットの使用が超重元素の作成を可能にするかもしれないことを示唆している。後の238U + 232Thの研究により、104 < Z < 116の新たな中性子過剰の超重元素の同位体に起因するであろう未知のアルファ崩壊がいくつか発見されたが、生成物の原子番号を明確に決定するにはさらなる研究が必要である。この結果は殻効果が断面積に大きな影響を与え、安定の島は移行反応を用いた将来的な実験により達成されるかもしれないことを強く示唆する。
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