古典的カイパーベルト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 04:45 UTC 版)
「エッジワース・カイパーベルト」の記事における「古典的カイパーベルト」の解説
詳細は「キュビワノ族」を参照 およそ 42-48 au の海王星との 2:3 共鳴と 1:2 共鳴の間の領域では、海王星との重力相互作用を起こす時間スケールは非常に長く、この領域内の天体の軌道は本質的には変化させられずに存在し続けることができる。この領域は「古典的カイパーベルト」として知られており、観測されているカイパーベルト天体のうちおよそ3分の2を占める。ここに属する天体で最初に発見されたものはアルビオンであるが、長い間にわたって仮符号 の 1992 QB1 と呼ばれていた。そのため、古典的カイパーベルト天体はしばしば "QB1" から取られた「キュビワノ族」と呼ばれることがある。国際天文学連合 (IAU) によって確立されたガイドラインでは、古典的カイパーベルトに属する天体に対する命名は、創造に関連した神話上の存在から与えることとしている。 古典的カイパーベルトは2つの異なるグループから構成されていると考えられる。1つ目は「力学的に冷たい」(dynamically cold) グループとして知られており、それらの軌道はより惑星のものと似ている。つまりほぼ円軌道で軌道離心率は0.1よりも小さく、最大でも10度と小さい軌道傾斜角を持つ。冷たいグループは「カーネル」(kernel) と呼ばれる天体の密集領域を含み、この領域は軌道長半径が 44–44.5 au の範囲に存在している。2つ目は「力学的に熱い」(dynamically hot) グループであり、軌道は黄道面から最大で30度と大きく傾いている。これら2つの「力学的に冷たい/熱い」という用語は温度の違いを表しているわけではなく、高温になると相対速度が上昇する気体中の粒子に対する比喩として名付けられたものである。 2つのグループは軌道の分布が異なるだけではなく、冷たい集団はより赤く明るい傾向にあるなど色とアルベドに違いが見られ、また連星になっている天体が多い、サイズ分布が異なる、非常に大きい天体が欠乏しているなどの違いも見られる。力学的に冷たいグループの天体の総質量は、熱い天体の質量のおよそ30分の1である。色の違いは組成の違いを反映していると考えられ、2つのグループは異なる領域で形成されたことを示唆する。力学的に熱いグループは海王星のかつての軌道の近くで形成され、巨大惑星の軌道移動の最中に散乱された天体群であるという説が提唱されている。一方で力学的に冷たいグループは、多かれ少なかれ現在の位置で形成されたと考えられている。これは、冷たいグループに見られる重力的に緩く結びついた連星は、海王星と遭遇した際に連星が破壊され生き延びることが出来ないだろうと考えられるからである。太陽系形成の有力な仮説であるニースモデルはグループ間の組成の違いを少なくとも部分的には説明できるように思われるが、色の違いは天体表面の進化の違いを反映している可能性があるとも示唆されている。
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