散乱円盤とカイパーベルト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/05 08:29 UTC 版)
「散乱円盤天体」の記事における「散乱円盤とカイパーベルト」の解説
「エッジワース・カイパーベルト」および「エッジワース・カイパーベルト天体」も参照 エッジワース・カイパーベルトは比較的厚いトーラス状 (あるいはドーナツ状) の分布をしており、30 au から 50 au まで広がっている。エッジワース・カイパーベルト天体は、海王星の影響を受けていない軌道にある古典的カイパーベルト天体 (キュビワノ族) と、海王星との何らかの軌道共鳴を起こしている共鳴外縁天体の2種類に大別される。共鳴外縁天体は例えば、海王星が3回公転する間に天体が2回公転する 2:3 共鳴や、海王星が2回公転する間に天体が1回公転する 1:2 共鳴といった軌道共鳴を起こしている。これらの共鳴のため、共鳴外縁天体は海王星に重力的に散乱させられるほど接近することはなく、太陽系の年齢の間に海王星の重力的な影響によって排除されることなく存在し続けることが出来る。2:3 共鳴を起こしている天体の中で最も大きいものが冥王星であるため、これらは冥王星族として知られている。また 1:2 共鳴を起こしているものはトゥーティノ族として知られている。 カイパーベルトとは対照的に、散乱円盤にある天体は海王星によって軌道を乱されうる。散乱円盤天体はその近日点 (~30 au) に接近した際には海王星の重力の影響を受ける範囲に入るが、遠日点付近ではそれよりも何倍も遠ざかる。ある研究では、木星と海王星の軌道の間にある氷主体の小天体であるケンタウルス族は、海王星によって太陽系の内側へ散乱された天体であることが示唆されており、海王星以遠の散乱天体と対比して海王星以内天体 (cis-Neptunian object) と呼ばれている。(29981) 1999 TD10 のようないくつかの天体はこの区別が曖昧であり、全ての太陽系外縁天体を公式に分類している小惑星センターは、ケンタウルス族と散乱円盤天体を一緒にまとめている。 小惑星センターはカイパーベルト天体と散乱円盤天体を明確に区別しており、安定な軌道にあるものをカイパーベルト天体、散乱された軌道にあるものを散乱円盤天体およびケンタウルス族としている。しかしカイパーベルトと散乱円盤の違いは明瞭なものではなく、多くの天文学者は散乱円盤は分離したグループではなくカイパーベルトの外部領域であると見ている。散乱円盤天体に対しては、「散乱カイパーベルト天体」(英: scattered Kuiper-belt object, SKBO) という別の用語も用いられる場合がある。 天文学者の Morbidelli とマイケル・ブラウンはカイパーベルト天体と散乱円盤天体の違いについて、後者は海王星との近接および遠隔遭遇によって軌道長半径が移動させられたものであるが、前者はそのような近接遭遇を経験していないものであるという区分を提案した。この描写は彼ら自身が注記している通り、太陽系の年齢の期間にわたっては適切なものではない。これは、軌道共鳴に捕獲された天体は何度も散乱された状態から散乱されていない状態を相互に移行しうるからである。つまり、太陽系外縁天体は時間とともにカイパーベルトと散乱円盤の間を行き来しうる。そのため彼らは天体を定義する代わりに領域をもって定義することを選択し、海王星のヒル球の範囲内で遭遇した天体が留まることの出来る軌道空間の領域を散乱円盤と定義した。そしてカイパーベルト天体は軌道長半径が 30 au 以上の天体が存在する領域と定義した。
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